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色ボケ藤太

色ボケ藤太と阿高の会話。

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「阿高・・・おれ、悩んでるんだ」
「なんだ。また千種が慣れてくれないとか、千種が笑いかけてくれないとかそういう類か」
「違うぞ!全然別のことだ」
「じゃあなんだ」
「千種がさ・・・」
「やっぱり千種なのか」
「最近おかしいんだ」
「どうおかしいんだ」
「人前でおれを見かけると、ものすごく警戒するようになってしまったんだ」
「前からだろう」
「いや、前は一丈程度距離をとってこっちを伺うくらいだった」
「どう違うのかおれにはよく分からないが」
「とにかく万事そういう調子だから、おれは仕方なくここ暫くは姿を見せないために千種の背後から近づくようにしてたんだ」
「何をしてるんだおまえは」
「けど、最近千種もいろいろ対策を立てるようになってしまって、容易には近づけなくなってきたんだ」
「へぇ」
「ちくしょう、千種はおれに何をさせたいんだ」
「何もさせたくないんだと思うが」
「まぁでも、そうやって頑張っている千種の裏をかいて手に入れた時の快感は格別だけどな」
「おれは時々おまえが全部狙ってやってるように思えるときがある」
「そうでもないぞ」
「ふうん。・・・ま、なんにしろ程ほどにしてくれ。でないとこっちの身がもたない」
「なんだ?そんなに親身に心配してくれてたのか?」
「まさか」
「じゃあなんなんだ」
「・・・鈴が」
「鈴?あぁ、そういえば千種はおれへの対策として背後に鈴を立たせたり、やたらと鈴とべたべたしたり、鈴と無意味に腕を組んだり・・・」
「(イライラ・・・)」
「あぁ、なるほどな」
「それだけじゃないぞ。鈴は最近おまえの行動に影響を受けて無邪気におれに仕掛けてくることもあるんだ」
「え、じゃあおまえ、突然背後から抱きつかれたりとか」
「・・・抱きつかれたというか・・・目隠しだったが」
「目を閉じている間に唇を奪われたりとか」
「・・・唇じゃなくて・・・頬だったが」
「・・・・・・・・・」
「本当に困っているんだ。藤太。はっきり言うが、おまえは教育に良くない。頼むから控えてくれ。鈴がすぐに真似をする」
「・・・・・・・・・」
「おい藤太、聞いているのか?・・・え、おまえなんで泣いているんだ」
「・・・阿高、おれはおまえをここまで羨ましいと思ったことは無いぞ」
「え・・・何を言って・・・ん?噂をすれば。おい藤太、あそこにいるのは千種じゃ・・・」
「ちくしょう!おれも千種に背後から抱きつかれたい!千種に唇を奪われたい!」
「藤太!大声で何を言っているの!」
「あ、千種。今のはおれの心の叫びだよ。届いたかい」
「藤太のばか!いつもいつも・・・は、恥ずかしいことばっかり!もう知らないんだから!近づかないで!」
「そんな!千種!待ってくれ!」
「・・・・・・・・・いっちまった。まったく、どうして藤太は千種のあんな態度で喜べるのか、おれにはさっぱり分からない」

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阿高もたまには惚気てみる。
そして鈴は恋人同士の行動の極意を藤太を見て無意識に学び取っている。

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