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起されて 出雲の王様 語りだす@出雲弥生の森博物館

出雲弥生の森博物館のご紹介をいたします!
なんとこの博物館は無料で見学できます!



この博物館は2010年4月29日に開館したばかりのとても新しい博物館です。
この写真は開館直後の2010年5月2日に撮影したものです。
開館したばかりの上にゴールデンウィーク中とあってとてもたくさんの人でにぎわっていました。

入り口をはいると、正面には子どもの遊ぶスペースが用意されています。
また右側にグッズ販売コーナーと、その向かい側に作業室があります。
左側には自由に閲覧できる図書スペースもあって、並んでいる本はどれも面白そうなものばかりです。
この博物館で講座を受けるときは、受付時間まではよくこのスペースで時間をつぶしています。

左に進むとすぐに二階に上る階段が左手側にあります。
展示室は二階にあるんです。

階段を上ったところ。


写真でおばさんが立ってるあたりが展示室の入り口なのですが、このおばさんがなぜここで立っているかというと、この入り口付近でちょっとした映像が流されているんです。
この映像も結構好きです。

中に入るとすぐこんな展示が見えます。



近づいてみると・・・





王の証・・・!?
勾玉・・・なのか、これ?
写真の画質が悪くてスミマセン・・・。
実物は凄くきれいです。
ガラスの勾玉なのですが、ご覧のとおり穴が二箇所に開いています。
とても珍しい形のようです。
たしか、ここでしか発見されていないと書かれていたと思います。(うろ覚え)

さらに進むとすぐに広いスペースに出ます。
そこにあるのは・・・



周囲にもいろんな展示があるのですが、まず何より始めに目に飛び込んでくるのがこのジオラマです。
四隅突出型墳丘墓の祭祀を再現しています。
私はいつもこういうジオラマが大好きで、夢中でカメラのシャッターをきってしまいます。

ここから怒涛のジオラマ写真攻撃が続きますので覚悟してください(笑)



さらにアップで撮ってみたり。

出雲王の葬儀に他の地域からの使者がいらっしゃったようです。
そのもてなしをしているところでしょうか。




その上ではまだ墓が建設中。




みんなで頑張って柱のようなものを立てています。




その向かいでは王の親族?や使者の中でも位の高いと思われる方々が葬祭儀礼に参加しています。




これは次の王になる夫婦のようです。




亡くなった王の遺体を埋めています。


墓の下でもいろんな人が働いています。

腕になんだか模様が見えますね。
刺青をしているようです。
この刺青の模様でどの部族に属しているかなどが分かるようです。
以下いろんな刺青の写真。






ジオラマの写真だけでこんなにスペースとってしまってスミマセン。
ジオラマはもう本当に楽しくて楽しくてここに載せている以外にもまだまだ写真があります。

ここで。

このジオラマに、実は館長さんのちょっとしたこだわりポイントがあるんです。
以前訪れた際、館長さんご自身が来賓の方を案内されているところに偶然遭遇したことがありまして、そこで話しておられるのをこっそり聞いてしまったんですよ。
そのこだわりポイントの写真がコチラ。



四隅突出型墳丘墓の突出している角の部分です。
分かるでしょうか?
四隅突出型墳丘墓にはその特殊な形のほかにもいろいろな特徴があります。
その一つが「はり石」です。
お墓の周りに石を貼り付けているんです。
この写真だとちょっと画質の問題で分かりにくいかもしれません。(ごめんなさい)
実際に復元されている四隅突出型墳丘墓(この博物館のすぐ近くにあります)のほうが分かりやすいかもしれません。



お分かりですか?
石が一箇所だけまるで中に導くように低く置かれています。
ジオラマのほうは確か手前の3つくらいが低めに置かれていたと思います。
実際に見てみると分かると思います。
これはジオラマにも復元墳丘墓の石碑にもまったく説明されていません。
というのも、実はこの四隅突出型墳丘墓には謎が多く、この突出している部分もなぜ突出しているのかよく分かっていないのです。
館長さんは数多くの四隅突出型墳丘墓を発掘された上で、石の置かれている状態などを検証して「墓へのぼる通路だったかも」という仮説を立てていらっしゃいました。
そのこだわりがこのジオラマに反映されています。
実際に行かれた際はぜひこのこだわり部分にも注目してみてください!
他にも学芸員の方が男性と女性の髪形にもかなりこだわったとおっしゃっておられました。
この時代の習俗の例としてよく引用されている京都の国立博物館にある再現人形の髪型とは違います。
「魏志倭人伝の記述とハニワを忠実に再現するとこうなるんです!」とのことです。
比べてみると面白いと思います。

また、壁に描かれている絵にも注目です!




この絵を描かれたのは復元画家の「早川和子」さんです。
本当によく研究してあります!
古代の復元画といえばこの人、と私は思っています。
イラスト集も出ています。
「よみがえる日本の古代」
古代出雲歴史博物館に所蔵されていたのを目にしたときからのファンです!イラスト集も即買ってしまいました!
見ているだけで時を忘れて幸せになれます。
古代好きな方にはおススメです。
イラストだけでなく、いろんな説明も書かれていてとても参考になります。

さて、中のご紹介はこれくらいにして(ホントはもっと他にもいろんな展示品がありますのでご期待ください!)、折角なのですぐ近くの四隅突出型墳丘墓の再現コーナーにも足を運んでみましょう!
駐車場から階段があります。
博物館を背にしてのぼりましょう。






階段を上ると・・・


何か見えてきた!



こ、これは!四隅突出型墳丘墓の突出部分ではないのか!?おおお!



こっちはのぼれるようになっている!のぼってみよう!





祭壇的なものも復元されています。

隣の墳丘墓たち。




私の浮かれっぷりが写真から伝わるでしょうか?
かなり楽しいです!
私がのぼっているのは「西谷3号墓」という、西谷墳墓群の中でも一番大きな墳丘墓の復元されたものです。
ホントにかなり大きいです。(ちなみに「西谷2号墓」は中に入れるようになってます)
この西谷墳墓群には大小たくさんの墳墓が作られています。
何より注目すべきなのは、四隅突出型墳丘墓の大きさトップ5のうち、最も大きいものを含む4つがこの西谷墳墓群に密集しているということです。

以前書いたかもしれませんが、古代には「巨大建造物を崇拝する習俗」がありました。
これは日本だけではなく世界的に見られます。
そして、その巨大な建造物が作られる時期というのはそこが最も繁栄している時ではなく、むしろ衰退する直前の時期に多く見られるそうです。
ゆえに、この西谷墳墓群に見られる巨大な四隅突出型墳丘墓は、まさに繁栄を謳歌した出雲王国が最後に渾身の力を振り絞った断末魔ともいえる存在なのかもしれません。

大きな墳丘墓を作った当時の出雲王は「どうだ、見たか!これがわれらの力だ!」と、何よりも誇らしく思ったことでしょう。
まるで多くの人々に見せ付けるかのような、威嚇するかのような大きさなのです。
それは逆にいえば、威嚇しなければならない危険な存在がいたかもしれないことを暗示しています。
一つの時代の終わり、新たな時代への転換期。
そんな時代に思いを馳せる遺跡です。
古代出雲王国を語るなら絶対に見ておかなければならない遺跡です!!!

以上、出雲の注目遺跡と博物館についてのご紹介でした。
少しは参考になるものがあったでしょうか?
なかなか時間の関係上全部に行くのは難しいかもしれません。
特にこの二つの遺跡は神話にしか興味のない方には少し退屈に思われるかもしれませんが、ちょっとでも古代の考古学や当時の人々の実際の生活なんかに興味がある方には最高に楽しい遺跡と博物館だと思います。
興味のある方は出雲においでになった際ぜひ足を運んでみてくださいね!

【追記】
そうそう最後に。
一昨日ご紹介させていただいた荒神谷遺跡で発掘された358本の銅剣や他銅鐸・銅矛などの復元が「古代出雲歴史博物館」に所蔵されていますと書きましたが、その写真をご紹介させていただきます。





ご覧になられましたか?
実物は言葉もないほど美しいです。
出雲においでになった方はぜひ「古代出雲歴史博物館」へも足をお運びください。
出雲でどうしても時間がない場合、「出雲大社」と「古代出雲歴史博物館」の二つには絶対に行くべきです。
この二つに行かなければ出雲に行ったことにはならないと個人的には思っています。
ぜひよろしくお願いします。