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官能部部誌感想その二

官能部部誌その2の感想つづきです。
相変わらずネタバレなので畳みます。

官能部部誌感想その二@糸村和奏さん

<ひとつになれない幸福>

エッセイのような、小説のような、不思議な形式の作品でした。
和奏さんのブログによると、梨木香歩さんの「沼地のある森を抜けて」という作品の影響が大きいそうですが、私はこの作品を読んだことがないのでご存知のお方は和奏さんの作品を読んでどのようにお感じになったのかぜひお聞かせいただきたいです。
私が初読で感じたのは、明確な起承転結や佳境はなくて、まるで軽くデザートを食べるような感覚で味わいながら最後の一口を飲み下した瞬間に、あれ?私いつの間に食べ終わってたの?
気づいたら夢中で貪っていたということを読み終わって初めて気づくんです。
すごく不思議な感覚です。
比較的短い作品でしたが、和奏さんの実験的な試みが大変興味深い仕上がりだったと思いました。

目に映っているのはゆっくりと蠢くつむじ。

開始二行目でこの一文。
いきなり度肝を抜かれた気がしました。
官能というか、もう、エロい(直球)
つむじが見えるってすごく近い距離なんですが、主人公の顔よりは相手の頭が下にあるということですからね。
しかもそれが蠢いている。
何てことだ…何てことだ…(落ち着け)
もうこの一文は商標登録したらいいと思いますね。
出てくる単語の一つ一つは健全そのものなのに、組み合わせるとこんなにも官能的になってしまう。
出てくる二人は大変爽やかな透明感を感じさせられましたが、二人がお互いへ抱く感情は切実な官能と愛情というのが堪りません。
ひとつになりたいと渇望しながら、一方で、別々の個体だからこそ相手から優しくされて嬉しかったり、抱きしめようとか囁き合おうとかそんな楽しみで胸を躍らせたりできるという幸福感でいっぱいになる主人公が大変可愛らしくて、この作品を読めてよかったと思いました。

続きはまた後日!