ま幸くと
- 2011/02/02 23:47
- Category: 趣味>万葉集にまつわる諸々
ま幸くと 言ひてしものを
白雲に 立ち棚引くと 聞けば悲しも (大伴家持)
都で待っているはずだった弟(書持:ふみもち)が、別れていくらも経たない内に死んだという知らせを聞いた大伴家持が詠んだ挽歌です。
ま幸く(まさきく)とは「元気でな、達者でな、無事でいろよ」というような意味なので、始めの二句の意味は「元気でいろよと言ったのに」という意味になります。
大伴家持は当時29歳で、越中に国司として派遣されていて、赴任先で弟の死を知らされました。
きっと都を発つ時は弟も元気に送り出してくれたのでしょう。
「元気でな」というのも、別れの挨拶の常套句のようにして軽く告げたのではないかと思います。
それが赴任して間もない時期に死んでしまったと聞かされるわけです。
「白雲に 立ち棚引くと」は、火葬してその煙が棚引いているということで「聞けば」からも、その場に居合わせず(遠くに赴任しているので火葬に立ち会うことが出来なかった)ただただその様を想像するしかないというやるせなさを感じます。
他の歌でも死を煙になぞらえたりしているのですが、それはその煙を実際に見て悲しみに浸っている歌が多いです。
でも家持はそれを見ることが出来ずただ想像して悲しむしかなかったのです。
たった一人の同母の弟の最期を看取ってやることも出来ず、火葬に立ち会うことも出来ず、ただ知らせを受けることしか出来なかった家持の心中を思うと胸が苦しくなります。
家持にとっては最後に見た弟は別れの時の「元気でな」と伝えた場面です。
きっとその場面を何度も思い返していて上記のような歌を詠んだのではないかと思います。
「元気でいろよと言っただろう。それが白い雲になって棚引いていると聞かされるなんて、悲しい・・・」※気分で訳してますので参考にはなりませんよ!
うわー!!やかもちー!!ふみもちー!!
「ま幸くと 言ひてしものを」の台詞がもう悲しくて悲しくて!!
万葉サークルでこの歌を取りあげたのは去年末だったのですが、それ以来ずっと「ま幸くと」のフレーズが頭から離れなくてかなり頻繁に考えてしまっています。
というか私が元々家持を好きすぎるのがいけないのかもしれない・・・。
おおお・・・家持・・・!
因みに説明するまでも無いかもしれませんが、大伴家持は薄紅天女が始まる直前の時代の人です。
万葉集の編纂に深く関わった人としても有名ですね。
万葉集は当時の人々の感情表現や生活習慣の参考に色々読んでいる途中なのですが、これが人によって解釈が大きく違うので面白いです。
今後もっと深く読んでいきたい!
そして薄紅創作でいつか「ま幸く」のフレーズを使いたい!(←気に入った)
・・・やりたいことが多すぎて段々いろんなことが回らなくなっている気がする今日この頃。