本歌取りと万葉集~藤原定家と本歌取り~
- 2014/04/17 21:57
- Category: 趣味>万葉集にまつわる諸々
次の日曜日唐突に京都へ行くことになった兼倉です。
京都はこれまで3回くらい行きましたが、いまだに行ったことが無い場所があったんです。
それは
金閣寺!(←フォント名を「Gold」にしたらこんな色に)
金閣寺楽しみですフォウ!
さらに別のつてで来週末は一泊予定で大阪へ行きます。
大阪に住んでいる友達と会えたらいいなあ。
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本日5連パチをくださった方ありがとうございます!
本歌取りは学べば学ぶほど奥が深くて大変興味深いです。
特に片方を知っていると、もう片方を知った時の感動が大きい気がします。
この感動を少しでもお届けできれば・・・!
というわけで、続きの「本歌取りと万葉集」です!
まずは本歌になった万葉歌から
苦しくも 降り来る雨か
三輪が崎 狭野のわたりに 家もあらなくに
(巻三 265)
歌意:どうも雨がひどく降って来て困ったことだなあ。
あいにくこの三輪が崎の佐野の渡し場には雨宿りする家もないのに。ああ。(伊藤博)
紀伊熊野地方は多雨で有名な土地です。
これは作者がその地を旅した時の歌のようです。
ここでの「家」は、雨よけの家、または泊まる宿、さらには家族の待つ我が家とする説があります。
で。
実はこの歌を元にした本歌取りの歌は、本歌取りの解説本で最も代表的な歌であるとよく紹介されているようです。
上の歌の雰囲気をよく覚えておいて、次の本歌取りした歌をご覧ください。
駒止めて 袖打ち払ふ 陰もなし
佐野のわたりの 雪の夕暮れ
(新古今和歌集 第六 671)
歌意:馬を止めて袖の雪を払うような物陰もない。
佐野のあたりまでやって来てこの雪だ、もう日も暮れようというのに・・・。
この歌を詠んだのは、百人一首の選定に深くかかわったとされる藤原定家です。
どうでしょう。
本歌からは言葉としては「佐野のわたり」を取っただけですが、旅先での雨や雪による苦しさと心細さという発想そのものを取り込んで、見事に換骨奪胎していると思いませんか!?
この歌を読んだとき、定家の才能のすさまじさを感じました。
何が凄いって、まず、定家は確実に想像で詠んでいるんですね。
実際彼が旅に出てその気持ちを詠んだわけではないんです。
だから万葉歌の方に感じられるリアルな現実の苦しさ、泥臭さが消えてしまっている。
なのに、本歌の持っていたテーマを完全に活かしきっている気がするんです。
万葉歌を十分に読みこんで、さらに自分の中でかなり高いレベルで昇華している人でないと、こうは出来ないのではないでしょうか。
凄い人だ、定家さん。
本歌取りは、適当な実力しかない人がやると、ただのパクリみたいになってしまいますが、定家さんをはじめ、実力派の方々の作品はそのもののすごさももちろんのこと、本歌の魅力もさらに引き出すような力作になっていると思います。
本歌取りは調べれば調べるほど本当に楽しいです!
それでは、定家さんにかかわる作品をもう一つ。
まずは万葉歌をご覧ください。
今度は長歌です。
名寸隅 の舟瀬 ゆ見ゆる淡路島 松帆 の浦に
朝なぎに玉藻 刈りつつ 夕なぎに藻塩 焼きつつ海人娘女 有りとは聞けど 見に行かむ縁 の無ければ丈夫 の情 はなしに手弱女 の 思ひたわみて徘徊 り 吾はそ恋ふる舟梶 を無み
歌意:名寸隅の船どまりから見える淡路島、その松帆の浦では朝の凪に玉藻を刈り、夕べの凪に藻塩を焼く漁師の少女がいると聞く。
しかし逢いに行こうにも術がないので、りっぱな男子の心根も消え、か弱い女のように心もしおれて、私はさまよいつつ恋うることだ。
船梶もないので。(中西進)
万葉時代において、海女の女性というのは、ちょっとエキゾチックでロマンを抱く存在だったようです。
海女の乙女を詠んでいる歌は万葉歌にたくさんあります。
何せ都は海がない場所ですからね、もう海というキーワードだけで異国情緒や憧れみたいなものがあったのではないかと想像しています。
これを本歌として定家が詠んだ歌。
ご存知のお方も多いかもしれません。
百人一首の中の定家自身の歌です。
来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身も焦がれつつ
歌意:待っても来ないあの人を、私は待っています。
松帆の浦の夕凪のなか、藻塩焼く火に、さながら、わが身もじりじりと焦がれるばかり。
恋に悶えながら・・・(田辺聖子)
異国情緒へのロマンだった歌が、一転して今度は切なく一途な恋の歌に・・・!
二、三、四句を本歌から引用しつつ、「来ぬ人を待つ(松帆の浦の「まつ」と掛けている)」「焼く、身も焦がれる」など、本歌をさらに発展させているところは見事という他ないです。
定家さんは、マジですごい人かもしれません。
ちょっと興味が出てきましたが、気持ちをぐっと抑えて今回はここまでに。
次回は定家さんの弟子にして、鎌倉幕府第三代将軍様の本歌取りについて書きます。
文人と武人の違いが非常に興味深いです。
次回もお付き合いいただけると嬉しいです!