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磐姫の嫉妬(追加)@八田若郎女・その1

時間がかかってしまった・・・!
磐姫の嫉妬@八田若郎女です!
若干復習も含めつつはじめます!

磐姫は仁徳天皇の皇后でしたが、大変嫉妬深いと有名なお方でございました。
それは自身が史上初めての皇族以外から立った皇后だったからという理由も大きく関わっていることと思われます。
天皇が他の妃と言葉を交わしただけで「足もあががに」暴れる磐姫の嫉妬物語。

此れよりのち大后おほきさきとよあかり祭り・宴したまはむとて、御綱みつながしは祭りに使う神聖な柏を採りに、きのくに幸行でまししあひだに、天皇八田やたのわか郎女いらつめひたまひき。

皇后が宴の準備のために外出している時、夫は他の女に手を出していた!
コラ!
磐姫がいる時はまともに他の女と会話も出来ない状態なので、仕方ないといえば仕方ないのですが。
磐姫が帰ってきたらどうするつもりだったのでしょうか。
既成事実で押し通すつもりだったとか?
それとも秘密にするつもりだったとか?
まぁ男の浮気は見破られるのが物語の常というものですが・・・。
続きを見ましょう。

ここに大后、御綱みつながしはを御船にてて(いっぱいに積んで)かへでます時、水取司もひとりのつかさ(飲み水を司る役所)使はゆる、吉備国の児島の仕丁よほろ役人おのが国に退まかるに、難波の大渡に、後れたる倉人女側近の女の船に遇ひき。乃ち語りて云ひしく、

天皇おほきみは、此日このごろ八田若郎女にひたまひて、昼夜ひるよる戯遊たはぶれますを、大后おほきさきの事きこさねかも、静かに遊び幸行でます」

といひき。

仕丁
「大君は今、八田若郎女という女に夢中ですよ。そりゃあもう昼夜なくイチャつきまくり!このこと磐姫さまはご存知なんでしょうかね?」
倉人女
「・・・ちょっとあんた、そこ、詳しく教えなさいよ


ソッコーばれたよ!\(^o^)/
アノ嫉妬深くて有名な磐姫さまがおとなしくしてるなんてありえねぇ!とでも思われてたんでしょうか。
少なくとも名もない役人にまで響き渡る皇后の嫉妬深さはかなりのものですね。
御綱みつながしはを御船にててというのも、「これだけあったら十分よね!ほほほほ(上機嫌)」って感じを想像させる表現なので、その後の急展開はよりいっそう際立ちます。
では続き。

しかして其の倉人女くらひとめ、此の語ることを聞きて、すなはち御船に追ひ近づきて、ありさまつぶさに仕丁よほろことの如くまをしき。ここに大后いたく恨み怒りまして、其の御船に載せし御綱柏は、ことごとに海に投げてたまひき。かれ其地そこなづけて御津前みつのさきふ。

磐姫
「御綱柏がたくさん積めたわ。これで宴も成功間違いなしよ。ふふふ♪」
倉人女
「皇后さま大変です、ヤツがまた浮気しました
磐姫

「御綱柏全部海に捨てておしまい(噴火)」

ちょww
やること極端ですよ姫さま(そこが面白いんですが)
個人的な感想ですが、古事記の磐姫の話の中で、この八田若郎女の話が一番痛快だと思います。
本人たちにとってはもちろん笑い事じゃないんですが、この上演を宴会で見ていた人たちはきっと笑い転げていたのでは?と思ってしまいます。
このコミカルな調子はこの後も続きます。
浮気を知った磐姫の次なる行動は・・・

即ち宮に入りさずて、其の御船を引ききて、堀江にさかのぼり、河のまにま山代やましろのぼでましき。此の時歌曰うたひたまひしく、

 つぎねふや 山代やましろがは
 河上かはのぼり のぼれば
 河のに てる
 を の木
 したに  てる
 びろ 椿つばき
 が花の 照りいまし
 の ひろりいますは 大君おほきみろかも

とうたひたまひき。

即ち山代よりめぐりて、やまくちに到りして歌曰うたひたまひしく、

 つぎねふや 山代やましろがは
 宮上みやのぼり のぼれば
 あをにより 奈良ならを過ぎ
 小楯をだて やまとを過ぎ
 くには 葛城かづらき 高宮たかみや
 吾家わぎへのあたり

かく歌ひてかへりて、しま筒木つつきからひと、名はが家に入りしき。

磐姫
「もうあんな浮気者の顔なんて見たくないのよ!」

・・・と言ったかは分かりませんが(笑)、磐姫は難波の高津宮を素通りして山城国に行ってしまいました。
途中の風景を眺めて若干夫を思い出しつつ、「わたしが見たい国はさらにこの先にある、実家の葛城国なのよね」と歌っているところからして、怒りはまったく治まっていないようです。
ちなみにはじめの歌は天皇を褒めているように訳されることが多いのですが、個人的にはの ひろりいますは 大君おほきみろかも」の部分は「手が広い」⇒「いろんな女に手を出す」みたいな意味に取れなくもないのでは・・・と疑っています。
一応歌の全訳を載せておきます。

(花いかだが生える山)山城川を
川を上り わたしが上っていくと
川の岸辺に 生え立つ よ 烏草樹の木
その下に 生い立つ 葉の広い 清らかな椿
その花のように 輝いていらっしゃって
その葉のように ゆたかに大きくおられるのは 大君でいらっしゃることよ

(花いかだが生える山)山城川を
皇居をさしおいて上り 私が遡っていくと
あをの)奈良山を過ぎ
(小楯のような山の)大和を過ぎ
わたしが見たい国は 葛城の高宮の
わたしの家のあたり


今日はここまで!
次回は皇后の暴挙を知って焦った仁徳天皇から入ります!