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日向神話こぼれ話~「五世の孫とは」&「御毛沼命の足跡」~

前の記事で予告させていただいたとおり
<神武天皇がアマテラスの五世の孫である意味>
<常世国に渡ったはずの兄・御毛沼命が高千穂で鬼退治をした話>

の二つについて簡単に書きます。

<神武天皇がアマテラスの五世の孫である意味>

山田永さんがとても面白い考察をされていたので、皆様にご紹介いたします。

最近遠山一郎氏が「『古事記』における五世の孫」という論文を発表しました。
ホヲリと神武天皇の間にウガヤフキアヘズをおくことで、神武天皇はアマテラスの五世の孫になるというのです。
(けい)()(りょう)という当時(古事記成立ころ)の法律によると、「親王(天皇の兄弟や皇子)より五世は天皇の親族ではない」とあります。
継体天皇は応神天皇の五世の孫だったから、皇位を継承できたのです。
それにあわせて、神武天皇はアマテラスの五世の孫になっていると遠山氏は考えています。
こうすることで、神武天皇はアマテラスの「血すじの内」に位置づけられたというのです。
たしかに、神武天皇だけは、天皇なのに「天つ神」と古事記中巻で呼ばれています。
神々の巻(上巻)と天皇の巻(中巻・下巻)とのつなぎとして、神武天皇は天皇でもあり天つ神でもあったのです。
(一方)オホクニヌシについても少し解説します。
なぜスサノヲの六世の孫なのでしょうか。
日本書紀(神代第八段正文)は、二神を親子と記しています。
「その方が短くてすっきりするのに」と思う人もいるでしょう。
菅野雅雄氏は、六世の孫を次のように説明します。(略)
仮にアマテラスを天皇にあてると、弟(スサノヲ)は親王となるので、六世の孫オホクニヌシは皇族ではないことになります。
だからオホクニヌシは、「王権(皇権)とは全く縁を絶たれた仮構の王者」となると菅野氏は考察しました。
卓見といえましょう。
そのため、オホクニヌシは国を作っても自分のものにはできないのです。
これははじめから与えられている条件なのです。


いかがでしょうか。
なかなか面白いと思いませんか?
葦原中国がもともとアマテラスの領分であるという根拠は何度かここで書きました。
神武天皇はその王権を継ぐ資格があり、さらに行動を起した(神武東征)ので、彼が打ち立てた国が葦原中国で続いていくことになりました。
一方大国主命も行動を起しましたが、彼には元から地上を治める権限(王権)はなかったため、国を譲ることになりました。
・・・という読み解きです。
「ほほぅ」と深く頷く方もあれば、「いやそれはどうだろう」とツッコミたい方もいらっしゃるでしょう。
「面白い!」と心のメモ帳にそっと書き加える方もいらっしゃるかもしれませんね。
何が正しいのか、本当はどうだったのか、それを知ることは不可能といっていい分野です。
みんなで好きに楽しみましょう!

それではもう一つの話。

<常世国に渡ったはずの兄・御毛沼命が高千穂で鬼退治をした話>

上巻最後で「御毛沼命は、波の穂を踏みて常世(とこよ)国に渡り()し」と書かれ、中巻以降は一切出てこなくなってしまった御毛沼命ですが、高千穂では別の伝承が伝えられています。
それによると、当時高千穂の付近に鬼八(きはち)という悪者が住んでいましたが、それを御毛沼命が退治して、現在高千穂神社に奉られれているとのことです。
詳しい伝承についてはhttp://www.miyagin.co.jp/pleasure/0102.htmlこちらのページをご参照ください。
良くある鬼退治の話ですね。
中国地方だと、岡山県の吉備津彦も似たようなことをしています。
こういう話を聞くと毎回、「実は鬼の方が地元の名士だったんじゃないのか・・・」という妄想をしてしまいます。
吉備津彦の方の鬼の名前は温羅(うら)というのですが、この鬼八にしても温羅にしても、個別に奉られています。
悪者として退治された存在を神として奉るのも、また日本ではよく見られることですね。
日本独特のことなのか、海外でも見られることなのか、今後の課題として残しておこうと思います。

これにて、日向神話語りを終えます。
終えるといっても、また何かネタが見つかったら、その都度ご紹介させていただこうと思っております。
私自身、この語りで日向神話に大変興味が深まりました。
実際に日向の地を訪れて、その神話を調べるのはとても楽しかったです。
引き続き注目していきたいと思います。

ここまでお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。
随分私の好きなことばっかり語ってしまったので、ほとんどの方を置いてけぼりにしてしまったかもしれないという自覚はあります。本当にスミマセン・・・。
少しでも私の「神話が好きだ」、「面白いんだ」、という気持ちが伝わっていたらいいなと思っています。
今年は古事記編纂1300年の節目の年なので、この機会に古事記ファンが増えてくれることを願いながら、できればそのお手伝いをしたい気持ちで今年は古事記に特に興味を持って追って行く予定です。
今後ともお付き合いいただける方は何卒よろしくお願いします。

また、創作への熱い思いも滾っております。
薄紅やNGもネタができたら語ったり創作したりする予定です。
こちらもよろしければ、ぜひ。