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荻原規子バトン

ネットでの知り合いの方からバトンというのを頂くのは人生初めてです。
いろんなサイト様でバトンなどのやり取りを見ていて「羨ましいなぁ」と思っていました。
まさか私がこの栄誉にあずかる日がこようとは!フォオオオオウ!(落ち着いて)
ということで、全力で回答させて頂きます!
因みにサイトを持っておられない方でもやってみたいと思われた方は、拍手の方から送っていただけましたら私がここで公開させて頂きます。
公開は嫌だけど、回答だけはしてみたい!という方は「引用不可」のチェックを入れて頂いたら、私が一人でこっそり喜びます。

それではいきます!


◇荻原ファン歴どのくらいですか?
出会いは2009年7月下旬でした。
もともと前年にレッドクリフが公開されたことにより高校時代に読んでいた三国志の小説が懐かしくなって引っ張り出していたことが歴史熱への引火の要因でした。
読み返しながら「やっぱりいいなぁ!!」となっていましたが、しばらくしたら手元にあるものだけでは満足できなくなりました。
時をおかず東京や大阪に行くたびに、まん○らけなどでこの作者さんの過去作品や関連作品などあさったわけですが、その中に弥生時代と神話を融合させたような話(いわゆる和風ファンタジーなんですが)の本があったのです。
もともと好きな作家さんだったこともあり、読み終わったときにはこの時代と神話への萌えが爆発しました。
その後似たような作品は無いかと血眼になって探していた時に出会ったのが荻原作品の代表作の一つである「勾玉三部作」でした。



◇1番最初に出会った荻原作品は?
読んだ順番は「空色勾玉」「白鳥異伝」「薄紅天女」「風神秘抄」でしたが、勾玉三部作は一気に購入しました(新書で)ので、出会いというなら「勾玉三部作」ということになるかと思います。



◇荻原作品で1番好きな作品は?またその理由は?
本来はここで「薄紅天女」と答えたいのですが、薄紅は創作するうちにいろいろな気持ちが湧きあがり過ぎてただ単に「好き」という言葉では表せない状況となってきました。
そういうわけで、何のてらいもなく好きといえる作品としては「空色勾玉」です。
そもそもこの作品を好きにならなければ、その後に続く作品を読もうとは思いませんでした。
狭也のしなやかな強さ、苦しさに真向かう勇気、稚羽矢や豊葦原への愛情、そして何より荻原先生の神話への慈しみと敬意の念に胸を打たれました。
キャラクターもさることながら、世界観がとても好きです。
神様が身近で、良いものも悪いものもごちゃまぜで、その中でのびのびと生きている空気は、まさしく当時の私が求めていた風景そのもののように感じられました。
また、実はこの当時母方の祖父を亡くして約1年という時期でもありました。
心の中で懐かしむものを無意識に探していたかもしれません。



◇1番好きなキャラクターは誰ですか?またその理由は?
茂里です。
昔からインテリ系に弱いです。
自分がいつも泥臭いことばっかりしかできないからかもしれません。
あと、某空色界の神の影響により科戸王が異常に気になっています。



◇男性キャラでの1番は?
ここでこの質問があるということは、上の質問では人間以外をこたえることも前提に入れられていたのでしょうか。
人間以外だったら明星かちびクロあたりが該当するんですよね?
明星かちびクロ・・・選べませんね・・・。
動物は基本的に結構好きなんですが、実家が動物を飼えない教育方針だったので実際に飼ったことがある動物はカエルかバッタかセミかカブトムシかクワガタか鯉くらいです。
大人になった今なら哺乳類も飼ってみたいですが、別れが辛そうで手を出せません。
そもそも今の状況では世話も満足にできそうにありませんしね^^;
友達の家の猫を触らせてもらうのが好きです。
・・・質問と全然関係ない回答になってしまった!



◇女性キャラでの1番は?
鈴さああああああああん!!!!!
創作していくうちにどんどん深みにハマりました。
狭也も遠子も好きなんですが、思い入れがどうしても鈴さんに傾いてしまいます。
好きというよりも愛着ということになるかもしれません。
・・・は!さっきの質問は「鈴鹿丸」でもよかったのか!?(待て)



◇好きなカップルは?
阿苑か藤千で大変迷いますね。
こちらも正直純粋な「好き」という気持ちでは表現できないくらいの気持ちがあります。
恋愛の形は人それぞれと思うのですが、この二組はそれぞれどんな形なのかといろいろ妄想を巡らせています。
創作する前は明らかに阿苑だったんですが、創作していくうちに藤千への愛情がどんどん膨らんできました。
今ではもう選べないかもしれません。
あと、某空色界の神の影響により「科→さや」が異常に気になっています。



◇好きなセリフは?
「薄紅天女」より高野上の「この子はわたしと同じように、遠くまで行く活力があるよ」
胸にグッときます。
こういってもらった時の鈴さんはどんな思いだったのだろう。
深読みすれば、後の鈴さんの運命も予見しているかのような台詞でもあります。
「空色勾玉」より狭也の「どうしても選ばなくてはならないのなら、言うわ。あたしは、あなたが殺されるのはいやよ。それくらいなら、輝の大御神を殺してほしい」
個人的に稚羽矢が狭也に惚れたのはこの台詞ではないかと思っています。
稚羽矢は恋愛感情とかよく分かってないかもしれませんが、この台詞で彼の中に何か大きな感情が生まれたのは確かではないかと!
後は同じく「空色勾玉」で狭也が土ぐもがどうのと話した時、父である乙彦が「おまえたちはよくそういう言い方をするが、土ぐもといっても、もとは同じ豊葦原の中つ国の民人だぞ」と話していたのも凄く印象に残っています。
これも私の胸を突くような台詞でした。
いがみ合っている者同士の設定であるはずなのに、当の本人たちは(全員でないにしても)こんな考え方をしているのかと。
この作品は、出生によって元から悪いものとか良いものとかそういう考え方ではないのだ、と知りました。
今まで読んできたものには無い感性だと思いました。
さらにもう一つ、「白鳥異伝」から小倶那の「遠子の傷だったのに・・・」とりあえず小倶那さんには私にヤンデレ萌えという新たな境地を教えてくれたことに対して相応の礼を受け取ってもらいたい。後日。
最後に「風神秘抄」から草十郎の「坂東の男はそうじゃないよ。後で教えてやる」どう教えてくれるのか大変気になりますなあああああ!!!!(落ち着け)



◇好きなシーンは?
鈴が(だれがそばにいようと、たとえ藤太のような人がそばにいようと、この人は孤独なのに違いない・・・・・・)と気付いたシーンが凄く好きです!
すでに何度か取り上げているシーンですが、ここは鈴がだれも気付かなかった阿高に唯一気付いた重要なシーンであり、鈴にとって阿高が特別になった瞬間でもあるのではないかと思っています。
この他薄紅天女には思い入れのあるシーンが多すぎてここでは上げきれないのが残念ですが、よく考えたらすでにたくさん語り倒しているので問題ないような気がします。
他作品の好きなシーンは、まず「空色勾玉」から、狭也が宮の池で泳ぐシーン。
ここ、本当に物凄く幻想的ですよね!
稚羽矢との運命の出会いシーンでもあるし、ここだけで何回読み返したことか!
後は、狭也が闇を味方にして宮の中を駆け回るシーン。
鳥彦を探すシーンですが、ここも本当に不思議な美しさを感じるシーンです!大好きです!
個人的にここのBGMはエンヤの「カリビアン・ブルー」です。
PVで見事な青いドレスに身を包んだエンヤが、まさにそれがこのシーンの狭也のイメージで凄くドキドキします。
そして「白鳥異伝」からは、角鹿と遠子の別れのシーンです。
「この次はもう少し危なくないところを歩きましょう。戦が終わったらまたおともさせてもらいますよ」
この台詞には全国の白鳥異伝ファンが涙しましたよね!私は泣いたさ!ああ泣いたさぁ!(落ち着いて)
もしかしたら好きな台詞の方に入れたほうがよかったかもしれませんが、ここは遠子の別れと決意の重要なシーンですので、思い入れもひとしおです。
それから「風神秘抄」から草十郎と鳥彦王の掛け合いもかなり好きです。
友達の気軽さと互いに信頼し合っている深さのバランスがとても見事だと思います。
二連とは違う深さとアッサリ感がとても爽快で大好きです。



◇実写化・アニメ化もしくは漫画化してほしい作品はありますか?
媒体が増えたらその分ファンも増えて創作も増えてくれるのではないかという期待は大いにあります!
しかし、映像や漫画に関して非常に知識が浅く、何を望めばいいのか途方にくれてしまいます。
とりあえず、何かがもし決まったら全力で応援して盛り上がっていきたいと思います。


◇↑してほしいとしたら誰に何の役をやってもらいたいですか?
又は誰に描いてもらいたいですか?

上で書いたとおり、非常に知識が浅いのでなんとも。
ジャパネスクを漫画化してくださった山内直実さんあたりを望むのは高望みしすぎですか・・・?
高校生当時古本屋で全巻購入して読みふけってました。
あ、ちなみに私の中で鈴さんはビビアン・スーの若い頃が非常に理想的だと思っています。
ちょっと身長が高すぎる気もしますが、雰囲気がとても素敵な方なので。



◇最後は荻原規子さんへ応援のメッセージを!
私の人生を180°変えてくださった荻原先生に心から感謝します。
ここでサイトを始めてとても多くの方々と知り合うことができました。
今は古代史を勉強するのが楽しくて仕方ありません。
友達からは「一生ものにできる趣味だね」といわれたこともあります。
本当にそうできたらいいなと思っています。
細々とではありますが、荻原先生のお陰で得えることができた知識や思いを少しずつ還元していくことが最近の目標であり生きがいです。
RDGもとても楽しみです。
お体にお気をつけて、今後も子どもたちを始めたくさんの人たちに夢と希望と楽しみを与えるお仕事をお続けいただけることを心より祈っております。



さて、バトンアンカーでもいいのですが、よければ、「紺屋きぬ」さま、「さわ」さま、「ゆき」さま、「櫻」さま、「ぴっころ」さま、「玖珂鼎」さま、「天城行」さま、「なかの」さま、お暇がございましたらいかがでしょうか?(※強制ではありません。スルーもどうかお気になさらず)
Rieさまもお答えになるとのことで、こちらも凄く楽しみです。



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エムブロ!バトン倉庫
http://mblg.tv/btn/view?id=46945
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終わりましたね。
長すぎるでしょうか。
通常一つのお題でだらだら語るのに慣れているせいか、いろんな質問にテンポよく答えることができませんでした。
無駄話が多すぎるんですよね、今後の反省材料として活かしていけたらと思います。
お読みくださった方、もしいらっしゃったら本当にありがとうございました!!

阿高の心の「死」と「再生」【その五】

【「心」のそれぞれの段階の「要因」と「結果」】後半戦続き

・「心」が再生するには、その結果阿高が得たもの

スミマセン、まず始めに謝らせてください。
始めはちゃんと考察っぽく書くつもりだったのですが、この部分に関してはもう妄想がとめどなく溢れてちょっと自分でも収拾がつかなくなってしまったので、思い切ってその妄想を形にしてみました。
二つあります。
一つ目は藤太と最後の別れのシーンの続き(コレ
二つ目は苑上と黒馬の対話シーンの阿高視点(コレ
※それぞれ単独でも読めますが、一つ目の方からお読みいただくと、より流れをつかみやすいと思います。
この創作を以って、この話の結論とさせてください。
ホント面目ないです・・・。
いつもよりもアトガキでの言い訳を長めに書いています。

【追記】
22時台に干し柿の方とanの方からダブルで3連パチを下さった方ありがとうございます!!!!!!
今年初めての更新ができました。
薄紅とNGの両方をお好きな方ですか!凄い!嬉しいです!
ご反応くださる方のお陰で続けていられます。
本当にありがとうございます。
少しで楽しんでいただけたら嬉しいです!
拍手ありがとうございました!!!!!!

阿高の心の「死」と「再生」【その四】

それでは続きです!

【「心」のそれぞれの段階の「要因」と「結果」】後半戦続き

・「心」が死ぬということ、「心」が死んだ「身体」(後半)

さて、少し間が空いてしまったので念のためもう一度確認しておきます。
ここでの前提として

「心」が死んだ状態=「自分の存在が誰からも不要になったと感じること」=「存在意義の喪失」

ということでした。
苑上編で阿高が自分の存在意義を見失ったところを引用してみます。

藤太はときおり、うめきに似たつぶやきをもらしながら、けんめいに傷の熱と戦っていた。
だれも彼とともに戦うことはできなかったし、かわってやることもできなかった。
阿高は、この立場に身をおいてはじめて、なぜ、藤太は阿高から怨霊の話を聞くとき、どこかつらそうな顔をしたのかを理解した。
(おれには何も見えていやしなかった・・・・・・いつもそうだ。自分のことばかりで)
うちひしがれて阿高が考えているとき、藤太が名を呼んだような気がした。はっとして身を乗り出し、阿高は熱心に耳元でささやいた。
「藤太、おれだ。何がしてほしいんだ」
短くあえぐ息が聞こえるだけだった。
阿高があきらめかけたとき、藤太は苦しげにつぶやいた。
「千種・・・・・・千種」
阿高は見つめた。
旅に出てからの藤太が、阿高の前ではひとこともその名を出さなかったっことを、殴られたように思い出した。


やはりここでしょうか。
そもそも、阿高はずっと誰もが持っているものを持っておらず、それが「孤独感」を募らせる要因になっています。
しかし武蔵にいた頃はそばに藤太がいて、自分を藤太と思うことでそれにふたをして明るく暮らしてくることができました。
今回の旅では、まず自分は藤太とは別の人間であるということを知りました。
阿高にとって、初めての「個(アイデンティティ)」の認識だったかもしれません。
そして初めて向き合った自分自身は、あまりにも他人とかけ離れていました。
阿高はそんな自分がどんなにかおぞましい思いであったことでしょう。
苑上編の前半は阿高の自虐的な台詞が何度も出てきていますね。
そんな阿高をずっとそばで支えてくれたのが藤太でした。
阿高自身が嫌悪する阿高を、藤太はずっとかばってくれていました。
苑上編において阿高の存在意義は、藤太でした。
阿高は藤太を同じだと思っていたころ以上に必要とし、支えにしていたはずです。
もちろん茂里や広梨も阿高を信じてくれています。
ただ、彼らは藤太と阿高の二連を信じているのだという気がするのです。
そういう意味でも、阿高にとって藤太の存在は大きかった。
そんな藤太が、死に瀕しているときに呼んだ名が「千種」
阿高はこれで止めを刺されたといっていいでしょう。
何も出来ることがないと打ちひしがれて、その上こんな時に求めらたのは別の人だったという事実は阿高を完全に打ちのめしたでしょう。

「どうしてそんなところに立っているの」
雨の中に阿高が立っており、淡い光を放っているのは、阿高が首にかけている玉だった。
明玉を目にしているのだと気づいたが、それが光を放っていることは、今の阿高にはどうでもいいことのようだった。
苑上が来たことを知っても、彼は顔も上げなければ返事もしなかった。
雨に打たれたままいつから立っているのか、ぬれそぼった髪がうつむいた首筋にまつわりついている。
「藤太のもとへ行くところだったの。外になどいないで、いっしょに行きましょう」
苑上はいったが、阿高はあいまいな身ぶりで行けと示しただけで、その場を動かなかった。
「そばにいてあげないの。一番近いあなたがどうして」
苑上は思わず歩をつめた。
そして、阿高が奥歯を噛みしめて泣いていたことに気がついた。
阿高はようやくのことで、かすれた声を押し出した。
行けない。藤太が死んだら、おれのせいだ」
「どうしてそんなことを」
「おれが殺したんだ。おれが・・・・・・ひき離した。こんなところまでつれてきて」


阿高が言った「行けない。」は、「必要とされてないと自覚した」という意味にも取れます。(※もちろん誤解ですが)
また、

朝までだまりとおすと見えた阿高が、ふいにぽつりとつぶやいた。
「甘えてたんだ。藤太に・・・・・・広梨や茂里にも。巻きこまずにはすまないことくらい、わかっていたはずなのに。藤太には待っている人がいるんだ」
「あなたにだっているのでしょう」
苑上はいったが、阿高は首をふった。
「一人で来るんだった。藤太を奪う権利なんてない」


阿高はさっき無力感を痛感していたはずなのに、また「一人で」とか言ってます。
自分が相手の力になりたいと望むことがどんなに純粋な望みか分かったはずなのに。
一見矛盾しているような気もしますが、これは阿高の心情としては致し方ないとも思えます。
なぜなら、誰かの力になりたいと望むのは、そもそも相手が自分にそれを望んでいる(期待している)ことが大前提だからです。
阿高はさっき望んでもらえませんでした。(千種を呼ばれてしまった)
あそこで阿高と藤太の対等な相互依存関係は崩れ、阿高は自分が藤太にとって千種よりも下の存在だと思い込んだのです。(こう考えると阿高の中の藤太との関係は、部分的にとても脆いところがあったということを察することができますね)
だからこそ、自分に巻き込むよりは千種の元にいたほうが藤太は幸せだったという短絡的思考になってしまったのではないかと思います。
阿高は藤太を精神的に失ったことにより、ここから先徐々に心をすり減らしていきます。

「おれは、なぜあいつらの一人ではいられないんだ」

この台詞はとても印象的でしたね。
薄紅天女が好きな方なら、おそらくこれを空で言える方も多いのではないでしょうか。
阿高の孤独と苦しみが一番現れている台詞でしょう。
そして、私はこの台詞にもう一つの別の読み方も出来ると思います。

この台詞を言った瞬間、阿高は「あいつらの一人で」いることを諦めたのではないかと。

つまりは決別の言葉ということです。
阿高の覚悟に一番初めに気づいたのは、他ならぬ目を覚ましたばかりの藤太でした。

(おれには阿高をおいていくつもりはない。だけど・・・・・・)
口に出すことはできなかった。
かすかな予感を感じ取りながら、藤太は寝息をたてる阿高をながめた。
(阿高はおれをおいていくかもしれない・・・・・・)


藤太は今までずっと、阿高の小さな変化にも一番敏感に気づいていましたね。
今回もやはり藤太の勘は的中しました。
藤太の体が治りきらないうちに阿高は都へ行くことを決断し、藤太に静かに別れを告げます。

藤太自身は、阿高の決意をかなり冷静に受けとめた。
彼の傷は熱を持たなくなり、痛みもひいてきたものの、まだ一人で上体を起すことはできなかった。
どんなに無理をしてもついていけるはずがなく、阿高が行くというなら見送るしかない。
だが、平気で残ることができるわけでもなかった。
「一人で行くんだな」
伝えにきた阿高から目をそらし、藤太はぽつりといった。
「そんなことをさせるために、勾玉を取り返したわけじゃなかった」
「これでよかったんだよ。おれさえ出ていけば、ここは安全になる」
阿高は静かにいった。
彼はいつのまにか、何かを思いきってしまったように見えた。
感情を殺してしまったようでもあり、どこか不吉な感じがした。


こうなってしまった阿高には、もはや藤太の望みを叶えることはできません。
なぜなら(阿高にとっては)阿高が藤太の望みをかなえるよりも、もっと優先されるべき望みがあるからです。
それは千種が藤太の帰りを望み、藤太もまた千種のもとへもどることを望んでいるということです。

「藤太には武蔵にもどってほしい。そうしておれの分まで、今までのように暮らしてほしいんだ」
藤太は傷が引きつるのを承知で腕を伸ばし、阿高の衣をつかんだ。
「わかっているのか。おれはおまえを武蔵へつれて帰ると約束したんだ。そのことを、忘れたとはいわせないぞ」
痛みをこらえて藤太がいったとき、はじめて阿高の目に苦しげな色が浮かんだ。
藤太の手をそっとはずし、上掛けのもとにもどすと、彼は目を伏せてささやいた。
「ごめん。今は約束できない」


阿高がここで苦しそうな顔をしたのは、なぜなのでしょうか。
藤太が前と変わらず阿高にともにいてほしいと望んでくれていたことで、一瞬感情がよみがえったためでしょうか。
それとも、藤太のその望みは以前とは違って一番に叶えられるべきものではなくなったんだと一人で勝手に傷ついているからでしょうか。
どちらにしても切ないです。

と、いうわけで。
苑上編において、阿高の心が死んだ瞬間をあえて挙げるとするならば、藤太が「千種」の名前を呼んだときということになるでしょうか。

心が死んだ阿高がどうなったか。
この後の苑上の視点を引用します。

苑上は、阿高の変化にうすうす気づいていた。
藤太のかたわらで目をさまして以来、彼はすっかりおちついたように見えていたが、その実、藤太が助かったというのに、阿高は泣いたあの日から立ち直っていなかった。
(あれは、よほどのことだったのだ。わたくしが思うよりずっと・・・・・・・)
一見淡々と伊勢の日々をすごしながら、阿高はあの日を境に、だれからも身をひいたようだった。
もともとそっけないところのある阿高だし、それほど目につきはしなかったのだが、藤太との別れに際して、嘆く様子をほとんど見せないとなると、その心の閉ざしようは明らかだった。


さらに苑上は都へ向かう途中に何度かの躊躇いを経て、阿高に声をかけました。
藤太に託されたこともあり、また、苑上自身が阿高に何らかの思いを抱いていたからと見えます。
そして苑上は阿高の心がすでにこの世の誰からも離れてしまっていることを知るのです。

「怨霊はおれにしか倒せない」
小声で阿高はいった。
「おれ自身がどう思おうと、おれは怨霊を倒すためにいるんだ。皇があいつとともにあるものなら、皇もどうなるかはわからない。それでも、おれは倒さなくてはならない。あれはおれの対だからだ」
「対?」
「怨霊の力がおれを呼ぶんだ。おれにきちんと出会うまで、あれは暴れ続けるだろう。おれの力も同じだ。たぶん、おれとあいつは響きあって、増幅しているんだ」
彼はもうだれにも弱味を見せようとはしなかった。
そんな阿高が苑上は悲しかった。
「そのきずなは、あなたと藤太のものより強いものだったの?藤太は今でも待っている。阿高にもどってきてほしいといっているのよ」
阿高はしばらく答えなかった。
それからささやくようにいった。
「強いよ」
顔をそむけ、阿高はまた月を見上げた。
「だから、早く終わりにしたいんだ」
藤太が怖いといったことが当たっているのだと、苑上は考えた。
阿高は望むことをあきらめている。
自分のためではなく、自分以外の人のために、すべてを切り捨ててその先へ進むつもりなのだ。


すべてを切り捨てて、というのがなんとも辛いです。
阿高は藤太から心を切り離し、武蔵へもどるという希望も捨てて、死すらいとわず都へ向かいました。
なんという残酷な状況なのかとも思いますが、今にして思えば、これは阿高にとって必要なことだったのかもしれません。
阿高はずっと藤太と自分を同一視してきました。
それが、このことによって完全に阿高として独立したともいえると思うのです。
荒療治・・・というにはあまりにも苛酷すぎる状況です。
しかし、これが阿高の運命だったのでしょう。
これ以降、阿高は藤太や他の人の望みや期待を気にすることなく、純粋に自分の言葉で自分の気持ちを発露するようになります。
その最たる場面が、帝との対面シーンであり、最後の戦いへ向かう直前の苑上との対話になっていくのではないかと思います。
それではまとめます。

※「心」が死ぬ段階のまとめ
・要因:藤太が死に瀕したときに呼んだ名が「千種」だった(命が掛かった一番大事なときに必要とされなかった)
・結果:対等な信頼関係の喪失(悪)と人間としての完全な独立(良)


結果を良い面と悪い面の二つを考えてみました。
あと、上の引用からは省きましたが、苑上の感情でとても心打たれたものがあったので、蛇足と知りつつ自分のメモとして引用しておきます。

(それではいけない・・・・・・)
だれかを絶望させて救ってもらう救いがあるだろうか。
もしも阿高が救いの主なら、彼自身が望みをなくすことなどありえないのではないだろうか。


長々とかかっててスミマセン!
今回はここまでです。
次はいよいよ
・「心」が再生するには、その結果阿高が得たもの
について書きたいと思います。
気長にお待ちいただければ幸いです。


私信
Rieさま!
>私のほうこそ幸せものです。兼倉さま、ありがとうございます! R
私なんかのメッセージで幸せを感じていただけるのならいくらでも!!!
というか私こそいつもRieさまのコメントに幸せと笑いを力いっぱい感じさせていただいております!
これからも何卒よろしくお願いします!

拍手やコメントありがとうございます!
次の記事で改めて御礼をさせてください!
遅くてホントスミマセン・・・!

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Re:お返事です!
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