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古事記と日本書紀(閑話休題)

イザナキとイザナミの国産み神話について続きを書いているんですが、そこでふと気付きました。
普段特に何の説明もなく書いていますが、皆様、「古事記」と「日本書紀」とは何かご存知でしょうか?
「何を今更、知ってるよ」という方はこの記事をお読みになる必要はございません。
「聞いたことはあるかもしれないけど、何のことかさっぱり」という方のために簡単にご説明させていただきます。

古事記」と「日本書紀」は両方とも日本の歴史書で、神話時代に始まって飛鳥時代までのことを書いています。
いろんな本ではよく合わせて「記紀」と略されています。
「きき」と読みます。
古事記=記
日本書紀=紀

ということですね。
また、日本神話のことは記紀神話といわれることもあります。
両方とも同じような意味ですが、記紀神話という場合は特に古事記と日本書紀に記載されている神話をさす場合に使います。
日本神話には記紀には載せられていない神話も多くあるので、それと明確に差別化したい場合に使われるようです。

で。
私が普段よく話題に取りあげている「古事記」は現存する日本の歴史書としては最古のものです。
成立は奈良時代初期の712年。(平城京遷都の二年後です)
来年で「古事記」成立1300年ということで、各地で色んなイベントが予定されています。正直かなりウハウハです。(だろうね)
「古事記」には神話時代~第33代推古天皇までの内容が書かれています。
上巻・中巻・下巻の全三巻です。
それぞれ
上巻・・・神話の時代(神代の巻)
中巻・・・神と人が交流する時代(英雄時代)
下巻・・・人の時代(人代の巻)

というような内容に分かれているという学説が一般的です。
私はこの中でも特に上巻の神話の時代に関する本を多く読んでいますが、中巻や下巻にもかなり興味があります。
中巻で一番人気があるのはやはり古代における悲劇の英雄として名高い「ヤマトタケル」でしょうか。
父を慕いながら、その性格と力ゆえに父から疎まれて各地に遠征に出される幼い皇子。
それぞれの地で戦功を上げるも、最期は故郷を想いながら遠く離れた地で死んでしまう。
しかしその魂は白鳥となって故郷の方角へ飛び去ったと伝えられます。
なんとも美しい英雄譚ですね!
下巻では色々と気になる人が多いのでアレなんですが、中でも以前猛り狂って旅行に行った大阪の今城塚古墳に眠っておられる「継体天皇」や、万葉集の冒頭を飾る歌に名前が挙がっている「雄略天皇」が特に気になる存在です。

語り始めると長くなるのでさくさく次へ。(既にちょっと長くなっている・・・)

一方「日本書紀」とは何かというと、「古事記」から遅れること八年後に編纂された歴史書です。
しかも古事記と違って六国史の中に数えられるれっきとした国史の一つです。(六国史・・・日本書紀、続日本紀、日本後紀、続日本後紀、文徳天皇実録、三代実録の計六編)
神話時代~第41代持統天皇までの内容が書かれています。
古事記よりも若干後の時代まで収められていますが、概ね同じような時代のことを書いています。
なお、どうして古事記が国史でなくて日本書紀が国史なのかは厳密なところ私にはよく分かりません。
まぁ単なる趣味でやっている人間としては、このあたりのことはあまり気にしなくてもいいかなと思っています。

しかし、日本書紀は古事記と内容的にはかなり大きな違いもあります。
例えば神話部分は古事記ではその約三分の一~四分の一を出雲神話という、大国主を中心とした長大な神話で構成していますが、日本書紀ではそこの部分を全く記述していません。
唯一最後の国譲り神話の部分だけが入っています。
因幡の素兎神話もスサノヲと大国主の舅婿争いも載っていません。
日本書紀ではスサノヲがヤマタノオロチを倒してクシナダ姫と結ばれ、その子どもとして大国主が産まれます。
そして次の章でいきなり国譲りです。
また、その後の内容も違いが見られます。
上記のヤマトタケルの伝承は、父思いの息子と息子思いの父親の話になっているし、雄略天皇のところで出てくる、白鳥異伝の菅流のモデルとなった「小子部栖軽(ちいさこべのすがる)」は古事記には記載が見られませんが、日本書紀には残っています。その他も多々。

一般的に、「古事記」は国内向け、「日本書紀」は諸外国向け(主に当時の中国や朝鮮?)の内容であるという見方が強いようです。
このあたりに関しては私もまだまだ勉強中で、あまり多くを語ることが出来ません(^_^;)
今後の課題として残したいと思います。

イザナキとイザナミの国産み神話:前編

本日は日本神話の中でも最初のクライマックス!(と私が思っている)

「イザナキとイザナミの国産み神話」

について語りたいと思います!
※上の「イザナキ」という表記に違和感を覚えた方もいらっしゃると思います。
「イザナキ」は「イザナギ」と書かれることも多いです。
しかし現在は「イザナキ」と発音するのが正しいらしいという学説が出てきています。
それが本当に正しいのかどうかは私にはよく分かりませんが、一応それに倣うことにしようかと思います。


で。
国産み神話ですよ!
日本神話では国を産んだのはこのイザナキとイザナミという二柱の神様ということになっています。(二柱=ふたはしら、と読みます。神様の数え方は一人二人ではなく一柱二柱となります。音読みで「にちゅう」と言う人もいます。どちらでもOK!)

ここで、なぜこの二柱の神様が国を産むことにしたのか、ご存知ですか?
国産みや天地創造といわれるものは世界各国の神話の殆どで一番最初に出てきます。(たまに出てこない神話もありますが)
とても重要な行為です。
キリスト教の聖書の神話では一番初めに出てくる神様が一番最初に天地を創造します。
ご存知の通り、一神教の絶対神が全てを創造する大変勇壮な神話です。
また、アイヌ神話(カムイユーカラ)でもやっぱり一番最初に出てくる二柱の神様が色々作っていきます。
五色の雲なんかは中国思想の影響を受けていそうですが、とても素朴で自然を愛するアイヌ民族特有の優しい雰囲気に満ち溢れた慕わしい神話です。
中国神話では何と始めに出てくる神様がいきなり死んでしまい、その遺体から様々なものが生まれて世界が出来上がります。
中国独自の思想が大変面白いです。
因みに日本国内の出雲神話でも一番初めに出てくる「八束水臣津野(やつかみずおみつの)命」が出来たばかりの小さかった出雲国を色々な場所の余った土地をひっぱって大きくします。
古事記には記載がなく、同時代に出雲国の人たちが編纂した「出雲国風土記」に載っています。
これもやはり大変ダイナミックな神話で面白いです!
さて、それではイザナキとイザナミはなぜ国を産むことにしたのかというと・・・答え。

他の神様に命令されたから。

!!!
いきなり人任せな理由です。
そんなきっかけで日本が出来たんかい!
っていうか、他の神様って誰?
イザナキやイザナミという国を産む神様よりも偉い神様が始めに現れて、二番目に現れたイザナキとイザナミに国を作らせたということなのか?
いやいやいや。
違います。
イザナキとイザナミが生まれたのは二番目ですらありません。
一応神様が現れる順に書き出してみます。

1.天之御中主神あめのみなかぬしのかみ
2.高御産巣日神たかみむすひのかみ
3.神産巣日神かむむすひのかみ
4.宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ
5.天之常立神あめのとこたちのかみ
6.国之常立神くにのとこたちのかみ
7.豊雲野神とよくもののかみ
8.宇比地邇神うひぢにのかみ須比智邇神すひぢにのかみ(これ以降は兄妹であり夫婦でもある二柱でワンセットの神様です)
9.角杙神つのぐひのかみ活杙神いくぐひのかみ
10.意富斗能地神おほとのじのかみ大斗乃弁神おほとのべのかみ
11.於母陀流神おもだるのかみ阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ
12.伊邪那岐神いざなきのかみ伊邪那美神いざなみのかみ ←やっと出てきた!

というように、実はイザナキとイザナミは始めから数えて十二番目に出てきた神様だったんです。
多すぎる!なんだこの数は!
因みにイザナキ&イザナミよりも前に出てくる神様は、二番目の高御産巣日神と三番目の神産巣日神以外は全く何もしません。
名前が出てくるだけで、消えてしまいます。
古事記本文最初の部分(の訓読文)を引用します。

天地あめつち初めてあらはれし時に、高天原に成りし神の名は天之御中主神。次に高御産巣日神。次に神産巣日神
この三柱の神はともに独神ひとりがみと成り坐して、身を隠しき

ホントに消えちゃった!
※独神とは性別のない神様という意味です。
性別が分かれるのは八番目のウヒジニ&スヒジニからで、それ以前は皆性別のない独神です。
それから「高天原」とは神様がいる天上界のことを指します。
読み方は「たかまがはら」「たかあまのはら」「たかまのはら」など色々あります。
私ははじめに読んだ本の影響で「たかあまのはら」と読んでいます。

一番初めに出てくる「天之御中主神」とか、さも一番偉そうな(なんせ全ての中心にいるという意味の名前)雰囲気なのに、上記のとおり出てきてそうそう何もせずに消えてしまうんです。
折角出てきたのに消えるとか、正直あなた方は何のために出てきたのですかと問いたくなりますね!
しかし今回は時間の都合で割愛します。(いつかまた別の機会にでも)

さて、ちょっと長くなりましたので今回はここで一旦区切りたいと思います。
国産み神話について語ろうとしたのに全然そこまでたどり着きませんでした・・・。
次回で産みます!
そして例の日本最古のセクハラ発言(笑)が出ますので乞うご期待!


追記
読み仮名をルビ表示にしてみました。
今までルビ表示は文字が小さすぎて読みにくいかも…と思っていたのであえて後ろにカッコつきで書いていたのですが、最近それだとどうしてもクドイかなぁとも思いはじめまして…。
どうですか?
どちらも労力的には大した差はありませんので、よろしければご意見などお気軽に拍手やこの日記のコメント欄から教えてくださいませ<(_ _)>

古事記

スミマセン、前の記事はちょっと愚痴が過ぎたので訂正します。
下の記事で何をそんなに動揺していたのかというとですね。
・・・古事記について人前で話さないといけなくなってしまったんです。(8月第一週の水曜日午前中予定)
信じられないことですが、ホントです。
誰の前で話すかというと、私がここでたまに書いている「万葉集サークル」のお方々です。
大体10?15人程度で平均年齢6?70代くらい、万葉集歴5?10年くらいの方々です。
このような方々の前で、私が古事記について2時間くらい喋るんです。
ちょっとここ何年かの中で最大のピンチです。
古事記についてはこれまでも何回かここで気楽に語ったりしてきましたが、今回はそんなわけにはいきません・・・よね?(当たり前)
人前で喋るとか、大学の卒論発表以来です。(遥か彼方の出来事)
どうしたらいいのか全然分かりません(T_T)
そんなわけで、皆様のお力をお借りしたいのです。
大変厚かましいお願いで本当にスミマセン。
拍手か日記のコメント欄辺りからアドバイスを何卒よろしくお願いします。

まずは、古事記や日本神話にあまり詳しくない方へ。
よろしければ、古事記や日本神話で好きな話とか、気になる話を教えてください。
普段こういう話題に触れておられない方の視点で、古事記や日本神話の話を聞くならこんなのが聞いてみたい、みたいなご意見が伺えると大変助かります。

次に、古事記や日本神話には日ごろから結構関心を持っておられる方へ。
おススメの古事記関連の書籍を教えてください。
古事記をやるならこれは外せない、とか、この人の本は面白かった、とかそんな感じの本を書籍名と著者名を含めて教えていただけると大変助かります。
というのも、私があんまり弱気なので、話の内容は参考文献紹介的な感じでいいよと言っていただけたんです。
なので、面白そうな本をご存知のお方がおられたら教えていただきたいわけです。
私が持っている本を参考までにあげますと以下の通りです。
・からくり読み解き古事記(著:山田永)
・「作品」として読む古事記講義(著:山田永)
・古代の読み方 神話と声/文字(著:西條勉)
・記紀の考古学(著:森浩一)
・日本神話の考古学(著:森浩一)
・古事記注釈(著:西郷信綱)
・山陰の古事記謎解き旅ガイド(著:古代出雲王国研究会)
・もう一度学びたい古事記と日本書紀
・山陰の神々 古社を訪ねて
・神話と民俗のかたち(著:井本英一)←これは古事記以外の世界各国の神話にも話題が波及しているので今回は省くかもしれません
・日本の古典をよむ1古事記(著:山口佳紀、神野志隆光)
・古事記 (上) 全訳注(著:次田 真幸)
・古事記を読みなおす(著:三浦佑之)
・読み解き古事記(著:坂田安弘)←でもこれは私の感性には合わなかった・・・(決して面白くないとかじゃないですよ!人によっては凄く大絶賛してたりします。)

上の本は全部を読んでいるわけではありません。
結構な数なんですが、気付いたら勝手に本棚に入ってたんです。(マテ)←気になる本を片っ端から買って後で読む戦略の途中(ということにしておいて下さい・・・)
後は三浦佑之さんの「口語訳 古事記」とか本居宣長の「古事記伝」関連の本も気になっていますが持ってません・・・(能力と金銭の兼ね合いで・・・)

というわけで、どなたか助けてください!!(T0T)
どうかお願いします(本気で切実に)

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