コノハナノサクヤ姫の出産話です!
別名ニニギ様最低最悪の章。(ェ)
前回かわいい新妻をもらってうっきうきのニニギ様のもとにサクヤ姫がステキな知らせを持ってやってくるところから始まります!
故、後に木花之佐久夜毘売、(ニニギのもとへ)参ゐ出でて白ししく、
「妾は、妊身みぬ。今、産む時に臨みて、この天つ神の御子は、私に産むべくあらぬが故に、請す」
とまをしき。
サクヤ「ニニギ様、聞いて聞いて。私実は子どもを授かったのです。天つ神様たるニニギ様の御子をお知らせもせずに勝手に産んではいけないと思ったから、申し上げに参りました」
サクヤかわいいよサクヤ!
大好きなニニギ様の子どもを授かって嬉しいんだろうなって雰囲気が伝わってくるようです。(電波受信)
サクヤ姫が「私に産むべくあらぬが故に」と言っていることから、どうやらニニギはサクヤ姫の妊娠を知ることができない状態にあったようです。
おそらく、古事記の当時はまだ通い婚の時代なので、サクヤ姫は結婚した後もニニギといっしょには住まずに、ずっと実家にいたのでしょう。
この時代の子どもは通常は父親とは住まずに、母親とその実家に住むものなのです。
それゆえ、サクヤ姫はわざわざニニギの元へやってきて懐妊を知らせたわけです。
では、その知らせを聞いたニニギの反応を見てみましょう。
爾くして、詔ひしく、
「佐久夜毘売、一宿にや妊みぬる。これは、我が子に非じ。必ず国つ神の子ならむ」
とのりたまひき。
ニニギ「たった一晩で子どもを孕むなんてありえるの?これはおれの子じゃない。きっとどこかの国つ神の子だ」
・・・・・・・。
私は基本的に神話をできるかぎり好意的に解釈しようと日々勤めているわけですが、正直ここはどうしようもない。
ニニギ様、最悪です。
これを聞いたときのサクヤ姫の心境を思うと大変やるせない・・・!
百歩譲って、この後の火中出産への伏線であるとしても、もっと他にやりようがあったのではないかと思わずにはいられません。
・・・とまあ、あまり不満ばかり書くのもあれなので、ここはさくっと続きにいきましょう。
愛するニニギに疑われたサクヤ姫は、さてどうするのか。
爾くして、答へて白さく、
「吾が妊める子、若し国つ神の子ならば、産む時に幸くあらじ。若し天つ神の御子ならば、幸くあらむ」
とまをして、即ち戸無き八尋殿を作り、その殿の内に入り、土を以て(隙間を)塗り塞ぎて、方に産まむとする時に、火を以てその殿に著けて(燃える中で)産みき。
サクヤ「・・・分りました。もし、私のお腹の子が国つ神の子ならば、産まれる時災いが起こるでしょう。もしちゃんと天つ神であるあなたの子ならば、産まれる時幸いがあるでしょう」
このときのサクヤ姫はさてどんな顔でニニギに告げたのか。
少なくとも、疑われたことを悲しんで泣いてるだけのお姫様じゃなかったということは分かりますね!
これは前にスサノヲとアマテラスのところでもやった「誓約(ウケヒ)」の形の一つでもあります。
ウケヒとは古代における占いの一種で、神様に審判を行ってもらう形式になっています。
方法は「もしAならば○○になる、もしBならば××になる」という結果を前に述べておいてから実行します。
そういえば、銀金でも美知主や真秀がやってましたね!
あれもウケヒです。
さて、古事記におけるスサノヲとアマテラスのときのウケヒは正しい形ではありませんでしたが、今回は正しい形で行われています。
・子どもが国つ神の子⇒産まれる時に災いが起こる
・子どもが天つ神の子⇒産まれる時に幸いがある
さらにサクヤ姫は泥で隙間を塗り固めた産屋に自ら火を放って、その中で出産を行います。
これは、ウケヒを行うときに、より不利な状況に持っていくためです。
ウケヒは神様の力を借りて行うもので、ウケヒを行う者自身が望むことに対して有利であってはならない(公平に行う)のです。
中世ヨーロッパでは魔女裁判でも同じような状況がありましたね。
詳しくは書きませんが、この神様に審判を託すという占いは日本だけでなく、また古代だけでなくいろんな場所のいろんな時代で行われています。
さて、日向神話の中でも特に有名な「木花之佐久夜毘売の火中出産」の章。
結果はどうなったのかというと・・・
故、その火の盛りに燃ゆる時に生める子の名は、火照命<此は、隼人の阿多君が祖ぞ>。
次に、生みし子の名は、火須勢理命。
次に、生みし子の御名は、火遠理命、亦の名は、天津日高日子穂々手見命<三柱>。
次の話の主人公である海幸彦こと「火照命」と山幸彦こと「火遠理命」の誕生です。
間に「火須勢理命」がいますが、古事記ではここで名前が出てくるだけで、このあとは一切登場しません。
ツクヨミと同様、謎の存在です。
この三人は名前がとても似ていますね。
それぞれ「火照命」は「火が照り始めた様子」、「火須勢理命」は「火が進んできたり、盛んになった様子」、最後の「火遠理命」は「火が遠のいた様子」となっています。
これに関してはウィキの「火須勢理命」のところに面白そうな記述があったので転記します。
火須勢理命の名では『古事記』にのみ登場する。『日本書紀』では、火闌降命(ほすそりのみこと。本文・第八の一書)または火酢芹命(ほすせりのみこと。第二・第三・第六の一書)が登場する。火闌降命は、本文では隼人の祖としており、第八の一書では、『古事記』で火照命の事績とされていることが火闌降命の事績として書かれている。
また、第二・第六の一書では、火酢芹命が長子としている。よって『古事記』における火照命の記述は本来は火闌降命(火酢芹命)についての伝承であり、『古事記』の編纂者が火照命という神を創作して火闌降命の事績をそちらに移したものと考えられている。
火須勢理命は、瓊々杵尊と木花開耶姫の子である。天孫降臨の段において、一夜で身蘢ったために瓊々杵尊に国津神の子ではないかと疑われ、木花開耶姫がその疑いを晴らすために火中で生んだ三神の第二子であり、火が盛んに燃え立つときに生まれたので「ホスセリ」と名附けられた。兄が火照命、弟が火遠理命である。
神名は、他の二柱と同様に本来は「穂」に因むものと考えられ、誕生時の説話に因んで「火」の字が宛てられたか、逆に「火」の字が宛てられたことから誕生時の説話が生まれたと考えられる。「スセリ」は須世理姫(すせりひめ)などと同様「進む」という意味で、「ホスセリ」は稲穂の成熟が進むという意味である。
火須勢理命は、その誕生の時に名前が登場するだけで、その後は一切出てこない。海幸彦(火照命)と山幸彦(火遠理命)という対称的な神の間に何もしない神を置くことで、バランスをとっているとする説もある。同様の構造は天御中主神、月夜見尊にも見られる。
なるほどねー!
さて、これにてニニギとサクヤ姫の本文は終わりですが、次の記事でこの話について少し補足を書きます。
それが終わったら、今度は登場人物を一新して、新たな物語の幕開けとなります!