Entry

因幡の素兎神話語り(予告)~さよなら因幡、ありがとう~

日曜日に日記を書くのは非常に久しぶりになりました。
仕事が休みなので外を歩き回ってばかりで家でゆっくりパソコンを起動する気力もなくなっておりました。
しかし、古事記編纂1300年の今年も残すところあと半月となりましたので、最後の悪あがきで古事記神話語りをやろうともそもそ準備しております。

お題は「因幡の素兎神話」です。

実は本日鳥取市で行われた古事記の講座に参加してきました。
そこでは因幡国ということで、白兎の話もいろいろ出てきていました。
その中で、武蔵国の大学で講義をされているという先生が仰られました。

「武蔵国では、因幡の白兎神話はほとんど知られていません」

え!?本当ですか!?
このサイトを始めた当初は確かに私も卑屈な鳥取県民らしく「因幡の白兎は県外ではあまり有名じゃないだろう」と思っていたのですが、拍手のコメントなどから意外と他の地域の方々もご存知だということを知って内心喜んでいたところでした。
ところが、この先生のお話では「今の国文学を志す大学生でも、因幡の白兎神話はほとんどが知らない」とのことです。
どうやらここをご覧の皆様は「今の国文学を志す大学生」よりも随分と日本神話への造詣が深いようです。
とはいえ稀に「皮をはがれたのはサメだと勘違いしていた(鮫肌だから?)」とか「大国主に兄がいるなんて知らなかった(これは私の友達)」とか言われることもあるので、これを機会に、

「古事記に載っている因幡の素兎神話は実際どんな話なのか」

というのを、私と一緒に見てみませんか?
私は来年の1月を以って約7年住んだこの因幡の土地を去ります。
これまでの愛着と感謝を精一杯込めて語ろうと思います。

この神話語りで参考にする予定の本を記載しておきます。(※敬称略)
・「作品」として読む 古事記講義(著:山田永、藤原書店)
・からくり読み解き 古事記(著:山田永、小学館)
・古事記注釈第三巻(著:西郷信綱、ちくま学芸文庫)
・古事記(上)全訳注(著:次田真幸、講談社学術文庫)
これ以外の資料も適宜取り入れながら書くと思います。

では、次の記事からはじめます!

日向神話こぼれ話~「五世の孫とは」&「御毛沼命の足跡」~

前の記事で予告させていただいたとおり
<神武天皇がアマテラスの五世の孫である意味>
<常世国に渡ったはずの兄・御毛沼命が高千穂で鬼退治をした話>

の二つについて簡単に書きます。

<神武天皇がアマテラスの五世の孫である意味>

山田永さんがとても面白い考察をされていたので、皆様にご紹介いたします。

最近遠山一郎氏が「『古事記』における五世の孫」という論文を発表しました。
ホヲリと神武天皇の間にウガヤフキアヘズをおくことで、神武天皇はアマテラスの五世の孫になるというのです。
(けい)()(りょう)という当時(古事記成立ころ)の法律によると、「親王(天皇の兄弟や皇子)より五世は天皇の親族ではない」とあります。
継体天皇は応神天皇の五世の孫だったから、皇位を継承できたのです。
それにあわせて、神武天皇はアマテラスの五世の孫になっていると遠山氏は考えています。
こうすることで、神武天皇はアマテラスの「血すじの内」に位置づけられたというのです。
たしかに、神武天皇だけは、天皇なのに「天つ神」と古事記中巻で呼ばれています。
神々の巻(上巻)と天皇の巻(中巻・下巻)とのつなぎとして、神武天皇は天皇でもあり天つ神でもあったのです。
(一方)オホクニヌシについても少し解説します。
なぜスサノヲの六世の孫なのでしょうか。
日本書紀(神代第八段正文)は、二神を親子と記しています。
「その方が短くてすっきりするのに」と思う人もいるでしょう。
菅野雅雄氏は、六世の孫を次のように説明します。(略)
仮にアマテラスを天皇にあてると、弟(スサノヲ)は親王となるので、六世の孫オホクニヌシは皇族ではないことになります。
だからオホクニヌシは、「王権(皇権)とは全く縁を絶たれた仮構の王者」となると菅野氏は考察しました。
卓見といえましょう。
そのため、オホクニヌシは国を作っても自分のものにはできないのです。
これははじめから与えられている条件なのです。


いかがでしょうか。
なかなか面白いと思いませんか?
葦原中国がもともとアマテラスの領分であるという根拠は何度かここで書きました。
神武天皇はその王権を継ぐ資格があり、さらに行動を起した(神武東征)ので、彼が打ち立てた国が葦原中国で続いていくことになりました。
一方大国主命も行動を起しましたが、彼には元から地上を治める権限(王権)はなかったため、国を譲ることになりました。
・・・という読み解きです。
「ほほぅ」と深く頷く方もあれば、「いやそれはどうだろう」とツッコミたい方もいらっしゃるでしょう。
「面白い!」と心のメモ帳にそっと書き加える方もいらっしゃるかもしれませんね。
何が正しいのか、本当はどうだったのか、それを知ることは不可能といっていい分野です。
みんなで好きに楽しみましょう!

それではもう一つの話。

<常世国に渡ったはずの兄・御毛沼命が高千穂で鬼退治をした話>

上巻最後で「御毛沼命は、波の穂を踏みて常世(とこよ)国に渡り()し」と書かれ、中巻以降は一切出てこなくなってしまった御毛沼命ですが、高千穂では別の伝承が伝えられています。
それによると、当時高千穂の付近に鬼八(きはち)という悪者が住んでいましたが、それを御毛沼命が退治して、現在高千穂神社に奉られれているとのことです。
詳しい伝承についてはhttp://www.miyagin.co.jp/pleasure/0102.htmlこちらのページをご参照ください。
良くある鬼退治の話ですね。
中国地方だと、岡山県の吉備津彦も似たようなことをしています。
こういう話を聞くと毎回、「実は鬼の方が地元の名士だったんじゃないのか・・・」という妄想をしてしまいます。
吉備津彦の方の鬼の名前は温羅(うら)というのですが、この鬼八にしても温羅にしても、個別に奉られています。
悪者として退治された存在を神として奉るのも、また日本ではよく見られることですね。
日本独特のことなのか、海外でも見られることなのか、今後の課題として残しておこうと思います。

これにて、日向神話語りを終えます。
終えるといっても、また何かネタが見つかったら、その都度ご紹介させていただこうと思っております。
私自身、この語りで日向神話に大変興味が深まりました。
実際に日向の地を訪れて、その神話を調べるのはとても楽しかったです。
引き続き注目していきたいと思います。

ここまでお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。
随分私の好きなことばっかり語ってしまったので、ほとんどの方を置いてけぼりにしてしまったかもしれないという自覚はあります。本当にスミマセン・・・。
少しでも私の「神話が好きだ」、「面白いんだ」、という気持ちが伝わっていたらいいなと思っています。
今年は古事記編纂1300年の節目の年なので、この機会に古事記ファンが増えてくれることを願いながら、できればそのお手伝いをしたい気持ちで今年は古事記に特に興味を持って追って行く予定です。
今後ともお付き合いいただける方は何卒よろしくお願いします。

また、創作への熱い思いも滾っております。
薄紅やNGもネタができたら語ったり創作したりする予定です。
こちらもよろしければ、ぜひ。

日向神話~神武天皇の誕生~

日向神話もいよいよ最後となりました。
神武天皇の誕生です。

()(あま)津日(つひ)(たか)日子(ひこ)波限(なぎさ)(たけ)鵜葺草(うがや)(ふき)不合(あへず)命、その(をば)玉依(たまより)毘売(びめ)命を(めと)りて、生みませる御子の名は、五瀬(いつせ)命。
次に稲氷(いなひ)命。
次に御毛沼(みけぬ)命。
次に(わか)御毛沼(みけぬ)命、(また)の名は、(とよ)御毛沼(みけぬ)命、亦の名は、(かむ)(やまと)伊波礼毘古(いはれびこ)命。

故、御毛沼命は、波の穂を踏みて常世(とこよ)国に渡り()し、稲氷命は、(はは)の国と()て海原に入り坐しき。

四人兄弟の一番最後に生まれた(かむ)(やまと)伊波礼毘古(いはれびこ)命」初代天皇とされる「神武天皇」です。
ニニギもホヲリもイハレヒコも、みんな兄弟で一番下の弟です。
これは「末子相続」の風俗の名残ではないかといわれることもあります。
「末子相続」はいろいろな視点から解説されることがありますが、簡単にいえば、先に生まれたきょうだいはどんどん独立していって、最後に残った末子が親の財産を相続するという形式です。
家督よりも財産の相続が大きな意味を持つ風習です。
家督の継承に重点が移ると「長子相続」の傾向が強くなるようです。

いきなり話がそれましたね。
スミマセン、戻します。

ウガヤフキアヘズはなんと自分の母の妹(叔母)と結婚してしまいました!
このタマヨリ姫という方は、前回最後のところで姉のトヨタマ姫が夫のホヲリと別れた後も忘れられなくて詠んだという歌を届けてくれたお方です。
タマヨリ姫は実は歌を届けるだけでなく、ある重要な任務を授かっていたのです。
それは、陸に残された姉の子ウガヤフキアヘズを養育するという任務だったのです。
その部分だけ本文を載せます。
上の本文の直前の話です。

(しか)くして(のち)は、その(うかか)ひし(こころ)(うら)むれども、()ふる心に()へずして、その御子を治養(ひた)(よし)によりて、その(おと)玉依(たまより)毘売(びめ)()けて、(ホヲリに)歌を(たてまつ)りき。

というわけで、ウガヤフキアヘズは自分が赤ん坊のときから面倒を見てくれていた叔母さんに妻問いをしたわけでした!
玉「立派に育ったわね。きっと姉上もお喜びになるでしょう。私も自分の息子のように思って心を込めて育てた甲斐があったわ」
ウ「叔母さん、折り入って話があります」
玉「あら、何かしら。好きな子でもできたの?」
ウ「叔母さん、おれのお嫁さんになってください!」
玉「え、えぇー!?」

この二人のロマンスが激しく気になって仕方ない。(正直)

また脱線しかかっててスミマセン。
萌えと興味がいろいろ入り混じっていまして(汗)

そうそう。
イハレヒコはこの後、長兄五瀬命とともに東を目指して旅立ちます。
それが中巻冒頭を飾る「神武東征」のお話です。
大分前にこの日記で「長髄彦(ながすねびこ)は可哀相なやつだ」みたいなことを書いたことがありましたが、その「長髄彦」が出てくるのもこの「神武東征」です。
いよいよヤマト統一に向けて歩みだします。

さて、これをもって日向神話の本文の語りは終わりです。
この後補足として「神武天皇がアマテラスの五世の孫である意味」と「常世国に渡ったはずの兄・御毛沼命が高千穂で鬼退治をした話」について書く予定です。

Page

Utility

簡易メニュー

薄紅語り
(過去の日記の薄紅天女の妄想語り一覧)
古代史語り
(過去の日記の古事記とか万葉集とか他)
Web拍手
(お気軽に頂けると嬉しいです)
拍手は別窓、語りは同窓で開きます。

日記内検索

カレンダー

< 2024.4 >
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
- - - - - - -

コメント一覧

未承認
2024/04/21 17:15 未承認
未承認
2024/04/21 16:20 未承認
Re:当サイトは11歳になりました
2021/12/09 20:35 兼倉(管理人)
Re:当サイトは11歳になりました
2021/11/27 12:01 りえ
Re:お返事です!
2021/05/09 13:07 兼倉(管理人)