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【国譲り神話】第一回:葦原中国は、私の子が治めます@アマテラス

※頂いたコメントへのお返事はひとつ前の記事にあります※


さあ、【国譲り神話】はじまります。

日本の国土は通称「葦原中国(あしはらのなかつくに)」と呼ばれ、出雲国の大国主神を代表として国つ神によって治められていました。(実は諸説あるので言い切ってしまうと本当はまずいのですが、今回はお許しください)
大国主神は、この出雲国でオロチを退治したスサノヲの六代後の子孫です。

ある時、高天原に住まうアマテラスが言いました。

天照大御神の(みこと)(もち)て、

豊葦原千秋長五百秋水穂国(とよあしはらのちあきのながいほあきのみずほのくに)は、()御子(みこ)正勝吾勝々速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)の知らさむ国ぞ」

と、(こと)()(たま)ひて、天降(あまくだ)しき。

アマテラス
「葦原中国は私の息子のオシホミミが治めるべき国よ」


いきなりものすごく長い名前が出てきましたね。
私訳の方では「葦原中国」と略してしまいましたが、実は、この長い名前は重要なんです。
ここまで、葦原中国は基本的に葦原中国と呼ばれていました。
ところが、ここでいきなりアマテラスが長々しい名前で呼ぶのです。
この長い名前「豊葦原千秋長五百秋水穂国」は、「豊かな大地である葦原中国の永久不変に瑞々しい稲穂の国」という意味です。
アマテラスは、この長い名前で葦原中国を褒めているんですね。
古事記が書かれた時代は、自分の治める国を良い言葉で予祝(よしゅく)するということが、統治者の大事な仕事の一つでした。
万葉集にも国や地名を褒める歌がたくさん残されています。
「言霊(ことだま)」といえばわかり易いでしょうか。

アマテラスが葦原中国を予祝する=葦原中国が自分の領分であることを主張している

ということです!

ここで、葦原中国は大国主神が治めているのに、アマテラスが横取りするのか!?と、思った方はいらっしゃいますか?
アマテラスが天の岩屋戸に隠れて光がささなくなったとき、高天原と一緒に葦原中国も光がなくなっていたことからも、古事記的には葦原中国はアマテラスの領分である「高天原」と同じ世界に属しているんです。
だから、アマテラスが息子のオシホミミに統治させようとします。
しかし、ここでちょっとした問題が起こります。

(ここ)に、天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)(あめ)浮橋(うきはし)にたたして、(のりたま)はく、

「豊葦原千秋長五百秋水穂国は、いたくさやぎて有りなり」

と、()らして、更に(高天原に)(かへ)(のぼ)りて、天照大神に(まを)しき。

オシホミミ
「ちょっと母さん、葦原中国って今かなりヤバいよ。俺にはムリ(きっぱり)」


何ということでしょう。
オシホミミはたいそうな名前を持っている割に、かなり腰抜けのようです。(※正勝吾勝々速日=正に勝った、吾が勝った、日が昇るごとく素早く勝った)
このオシホミミはアマテラスとスサノヲが「うけひ」をした時に生まれたアマテラスの五柱の息子の内の一柱です。
それゆえ、このたいそうな名前はスサノヲの勝どきの言葉を表しているという説が有力なようです。
この時の調子に乗った(?)スサノヲの勝どきの行為がアマテラスを天の岩屋戸に引きこもらせる原因にもなりましたね。

さあ、困ったアマテラス。
折角息子に統治させようとしたのに、当の息子に拒否されたのでは話になりません。
八百万(やおよろず)の神様たちを集めてみんなで相談することにしました。
ここで、アマテラスが天の岩屋戸にこもった時にナイスアイデアを披露した「思金神(おもひかねのかみ)」といういかにも思慮深そうな名前の神様が再びアイデアを出します。

天菩比神(あめのほひのかみ)、これ(つかは)すべし」

オモヒカネ「私が思いますに、まず兄君のアメノホヒ様をお遣わしになってはいかがかと」

来たああーー!!!
今回の語りの超重要任務が出雲大社宮司の祖神の古事記の中での活躍を書くことでした。
出てきましたよ!
この天菩比神(あめのほひのかみ)という神様が、そのお方です!!
アメノホヒは、オシホミミと同様アマテラスとスサノヲの「うけひ」によって生まれた五柱の内の一柱です。
つまり、出雲大社の宮司は古事記的にはもともとアマテラスの子孫の家系ということです。
初めて知る人にはかなり驚きの事実ですよね!
大国主神の子孫じゃないんですよ!

さあ!出雲への第一の使者に任命されたアメノホヒさん!
いったいどんな大活躍を見せてくれるんだい!?

(かれ)、天菩比神を(つかは)せば、(すなは)大国主(おほくにぬし)神に()びつきて、()(とせ)に至るまで(かへりこと)(まを)さず。

アメノホヒ ハ オオクニヌシ ノ ナカマ ニ ナッタ!(てろり~ん♪

てろり~ん♪じゃないよね。
いったいどういうことなんですかアメノホヒさん。
大国主神に取り入って隙を作ろうとしている高度な作戦って言いたいんですか?
駄目ですよ、さすがに三年音信不通じゃ信憑性ありませんよ。
もうこれ、あれですよね。
完全に裏切ったわけですよね。
な、な、な、なんてこった!
きっと何か止むに止まれぬ事情があったと信じたいですが、古事記にはそんなフォローは一文字も書かれていません。
派遣された次の文章でソッコー裏切ってます。
実は古事記ではなく出雲大社宮司に伝わる「出雲国造神賀詞」の中では、きちんと報告したり国つ神を平定したりしてるんですけどね。
とりあえず、この「止むに止まれぬ事情」を大いに妄想するのは非常に楽しいことではないのかと私は一人ニヤニヤしています。
最終的に国を譲って隠居した大国主神に、アメノホヒはその後子々孫々に至るまでずっと仕え続けているわけですから、これは絶対に何かあってもらいたいと思うのです。


さて、高天原のアマテラスはせっかく使者として派遣したアメノホヒが全然報告をしてくれないので業を煮やして次の手に出ます。
続きは次の記事で!

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