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勢いのまま続きです!
予告どおり、口子臣の受難シーンから。
故、是の口子臣、此の御歌を白す時、大く雨ふりき。爾くして其の雨を避けず、前つ殿戸に参伏せば(口子臣が)正面の戸の前に伏せば、違ひて後つ戸に出でたまひ(皇后は)反対に裏の戸の前にお出になって、後つ殿戸に参伏せば、違ひて前つ戸に出でたまひき。
爾くして匍匐ひ進み赴きて、中に跪きし時、水潦(雨で)溜まった水が腰に至りき。其の臣、紅の紐著けたる青摺の衣紅い紐をつけた青い衣(官人の制服?)を服たり。故、水潦紅の紐に払れて、青皆紅の色に変りぬ。
口子臣が正面の戸の前に伏せば、皇后は反対に裏の戸にお出になって、口子臣が裏の戸の前に伏せば、皇后は反対に正面の戸にお出になった。
磐姫さまなんというイヤガラセww
雨の降りしきる中、口子臣は上司の痴話喧嘩の仲裁のためにずぶ濡れになりながら頑張っています。(イイ迷惑)
しかしそんな懸命な口子臣を嘲笑うかのように大降りの雨がたたきつけ、中庭に溜まった水は、伏している口子臣の腰にまでいたるほど。
紅に染めた紐が水に浸かって色が染み出し、臣の青い衣を紅く染めてしまったのでした。
ああ、これは他人事じゃない。
私も昔ワインレッドの皮の手袋を間違って洗濯機の中に入れてしまって、洗濯物全部くすんだワインレッドに染め上げたことがありました。
あれ、もう一度洗っても落ちないんだよ!!(辛い思い出)
口子臣可哀相に・・・!(同情の涙を流しつつ)
と勝手に感情移入していたら、本文でも泣いている人が。
爾して口子臣の妹、口日売、大后に仕へ奉れり。故、是の口日売歌曰ひしく、
山代の 筒木の宮皇后がいるので宮と称すか?に 物申す
吾が兄の君は 涙ぐましも
とうたひき。爾して大后其の所由を問ひたまひし時、答へて白ししく、
「僕が兄、口子臣なり」
とまをしき。
妹「お兄ちゃあああああああん!!(号泣)」
洗濯物の心配をしたわけではありませんよ。(知ってるよ)
兄を思う妹の涙に磐姫様も(さすがに可哀相かしら・・・)と思ってくれたらしく、口子臣を屋敷に入れてくれたようです。
磐姫「でもまだ許したわけじゃないのよ!」
(注・兼倉の趣味により若干ツンデレ気味にお送りしております)
なかなか解けない磐姫の怒り。
そこで口子臣・口比売・奴理能美の三人は知恵を出し合います。
是に口子臣、また其の妹口比売、また奴理能美、三人議りて天皇に奏さしめて云ひしく、
「大后の幸行でましし所以は、奴理能美が養へる虫、一度は匐ふむしに為り、一度は殻に為り、一度は飛ぶ鳥に為りて、三色に変はる奇しき虫有り。此の虫看行はしに入り坐ししにこそ。更に異しき心無し」
といひき。
~古代会議想像~
奴「このままじゃマジでヤバい。どうしよう・・・」
兄「どうすんの?どうすんの?」
奴「とにかく二人を会わせないことには・・・」
妹「わたくしにいい考えがあります」
二人「マジで!?」
妹「オオサザキ様を『ヌリノミの屋形に類稀な美女がおります』と言って誘き寄せるのです。完璧な作戦です」
兄「・・・うん、多分大君はそれむっちゃ引っかかると思うけどね」
奴「皇后様に殺されるよ、俺」
妹「それもそうですね・・・残念」
兄「・・・あ、でも大君を誘き寄せる作戦は結構イイ線いってるかも。大君が直接お出でになれば、皇后様も俺の時みたいに避けるわけにはいかないし」
奴「問題は何をエサに誘き寄せるかだな」
妹「宮には珍かなものは大抵あるし・・・」
奴「虫は?」
兄「虫?君の飼ってる虫ってカイコじゃん。珍しくもなんともないよ」
奴「ここで問題です。はじめは這ってて、次に鼓になって、最後に鳥になる虫なーんだ」
兄「なにそれ!?そんな虫もってるの!?」
妹「見せて見せて!」
奴「答えはカイコでしたー」
妹「・・・・・・(ギリッ)」
兄「・・・うん、まぁ、そんなオチだとは思ったけど。でも大君もそれなら興味もってくれるかもね。皇后様もまさかカイコにまではやきもち焼かないだろうし」
奴「じゃあ皇后様はこの珍しい虫を見にウチにいらっしゃったってことで」
兄妹「そうしよう」
勝手な捏造でスミマセン。
この三人の作戦会議にもぜひ参加してみたい!
因みに豆知識。
古代において「なんかうねうねしてるもの」は全部「コ」と呼ばれていたらしいと聞きました。
家で飼うから「飼いコ」、生で食べるから「生コ」などの名前で今でも残っているそうです。
かく奏す時に、天皇詔りたまひしく、
「然らば吾も奇異しと思ふ。故、見に行かむと欲ふ」
とのりたまひて、大宮より上り幸でまして、奴理能美の家に入り坐しし時、其の奴理能美、己が養へる三種の虫を大后に献りき。
三種の虫キター!!!
作戦の第一段階成功です!
第一段階というか、来てもらったらもう後は二人の問題なので、ほとんど成功のようなものといってもいいかもしれませんが。
因みに、私これを始めて読んだ時は別の解釈だったんですよ。
奴理能美たちが考えた言い訳は、あくまでも磐姫が奴理能美の屋敷にいることに他意がないこと(そしてそれを匿っている奴理能美にも他意がないこと)を示すためであって、仁徳天皇がそれに興味を示すのは想定外で、また、仁徳天皇も騙されたのではなく、カイコのことと分かっていた上で(なんせ私にもカイコのことだとすぐ分かったし)、あえてそれを利用して、磐姫のいる奴理能美の屋敷に向かう口実にしたんだ(なので奴理能美の屋敷に向かったのはあくまでも磐姫に会うのが目的)と思い込んでました。
そんなのどこにも書いてないのにね!
私は昔からこういう文章に書いていないことを自分で勝手に捏造して思い込んでしまうという非常におバカな癖を持っておりまして、しかもそれをみんながそう思っていると信じ込んでいるので本当にタチが悪いです(苦笑)
話が逸れました!戻します!
養蚕はそもそも稲作と同時期くらいに日本に伝わったといわれているので、大体縄文晩期から弥生初期あたりと考えていいでしょう。
仁徳天皇の時代は古墳時代なので、養蚕は日本の国家にはすでに根付いていて、重要な産業の一つになっていたことと思います。
奴理能美の家業が養蚕だったかどうかは分かりませんが、天皇と皇后の痴話喧嘩の仲裁に持ち出してきたくらいなので、恐らくは日ごろから気に掛けている存在だったのではないでしょうか。
今日はここまで!
次回が最後です。
「仁徳天皇と磐姫の和解と、八田若郎女のその後」
次回もよろしくお願いします!!