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唐突に藤千

夕暮れ時の屋形へ続く道。

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「あれ、千種?」
「藤太」
「どうしたんだ、そんなところに座り込んで。それにその大きな荷物は」
「ちょうどよかった、助かったわ。これは美郷姉さまのお使いでいってきたところからお礼にタカムナをたくさんいただいたのよ。ありがたいのだけど、運ぶのが重くて重くて。ここで少し休んでからと思っていたの」
「そうだったのか。それは大変だったな」
「藤太、お願いよ。半分手伝ってちょうだい」
「お安い御用だ」
「ありがと・・・て、きゃっ・・・ちょ、ちょっと、藤太!どうしてわたしまで持ち上げるのよ!」
「半分なんて遠慮することはない。おれが全部まとめて面倒みるよ、千種もね」
「待って藤太、わたしはいいわよ、おろしてちょうだい」
「疲れているんだろう。気にしなくてもいいよ」
「そういうことではなくて・・・」
「ひとに見られるのがいやなら屋形の近くになったら千種だけ降ろすよ。それならいいだろう」
「でも疲れているのは藤太も同じはずよ。牧の仕事の帰りでしょう」
「千種の顔を見たら一日の疲れなんて吹き飛ぶのさ」
「!・・・っ・・・また、そういうことを・・・」
「本当のことだ。千種も恥ずかしがることないのに」
「・・・・・・・・・・・・」
「千種?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ちーぐさー?」
「・・・・・・その・・・」
「ん?」
「・・・実は、あ、足が、少し、痛いくて。・・・その、少しの間だけ、あ、藤太に無理のない程度に、お・・・お願いしても、いいかしら」
「・・・もちろん!」
「藤太、無理はしないでね。わたしは大丈夫だから」
「遠慮しなくていいよ。きみが望むならいつまでもどこまでもおれは苦にならない」
「・・・ありがとう」
「なんの。どうせお礼はあとでたっぷり頂くから気にしなくていいよ」
「!やっぱり今すぐ降ろして!」
「もう遅い」

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タカムナは筍の古語です。というわけで季節がいきなり春ですみません。
相変わらず勢いだけのネタです。
多少千種を素直にしてみる試み。
春の雪解けとともに千種の態度も多少軟化(かも)。
しかし結局藤太がいつもどおりなのでオチもいつもどおりになりました。(テーマが活かせてない・・・!)

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